OKAMOTO’Sオカモトショウ連載『月刊オカモトショウ』
OKAMOTO’S・オカモトショウが選ぶ「2025年ベストコミック」 『げにかすり』は「脳みそがひっくり返る」
ロックバンドOKAMOTO’Sのボーカル、そして、ソロアーティストとしても活躍するオカモトショウが、名作マンガや注目作品をご紹介する「月刊オカモトショウ」。今回はのテーマは“2025年に印象に残ったマンガ”。「マンガ大賞」の選考委員もつとめているオカモトショウの2025年のベストコミックを発表します!
オカモトショウが選ぶ2025年ベストコミック
『げにかすり』迫稔雄(集英社)
『メダリスト』いるまいかだ(講談社)
『平成敗残兵すみれちゃん』里見U(講談社)
『九条の大罪』真鍋昌平(小学館)
まず紹介したいのが『げにかすり』
——今回は“2025年のベスト・コミック”です!
そろそろ「マンガ大賞2026」の投票なので、今年どんなマンガあったかな……と振り返りながら選んでみました。既に紹介している作品もあるんですけど、『げにかすり』(迫稔雄/集英社「週刊ヤングジャンプ」で連載中)を紹介してなかった! と思って。これは面白いし、自分としては今年のヒット作の一つです。
——『嘘喰い』『バトゥーキ』の迫稔雄さんの新作ですね。
『嘘喰い』はギャンブルとバトルアクションの噛み合い方がめちゃくちゃ良くて。そういう系のマンガはその後たくさん出てくるんですけど、『嘘喰い』の黄金比は本当にすごくて、俺ら世代はみんなハマってたんですよ。青年マンガ誌特有の毒気のある魅力をポップかつディープに描くのが上手い方なんですけど、『げにかすり』でまた大きい花火が上がったなと。あらすじとしては、主人公・針磨梁(はりまりょう)は元プロボクサーで。試合中に大けがして、2年間昏睡状態だったんですけど、目覚めてみたらファイトマネーは消えていて、父親が死んでいて。要はジムの会長とかにハメられたんですよ。で、そこからボクシングのプロモーターとしてのし上がっていくというストーリーですね。『あしたのジョー』『はじめの一歩』などの名作があって、じゃあ次は? というところで出てきたのが、ボクシング界の裏を描くマンガだったというか。
——選手というより、その背後にいる人たちの策略と駆け引きがメイン?
基本的にはそうですね。“ボクシングは裏の世界とつながりがあって、きれいごとでは済まない”というのはよく使われる設定ですけど、主人公が元ボクサーなので、バトルというか、イリーガルな試合もあって。相手の用心棒みたいな人を腕づくで抑え込んでり、危ない目にあったり、苦戦しながら勝っていくという話でもありますね。
頭脳戦、情報戦も描き方も面白くて。たとえば試合相手のボクサーがコーチの奥さんと不倫している、とか。その情報で相手を揺さぶったりするんですけど、それが妙にリアルなんですよね。主人公自身もダマされて、選手生命を終わらせられたわけじゃないですか。その後、プロモーターとして巻き返していくんですけど、山場の作り方もすごく上手くて、めちゃくちゃ盛り上がりますね。とにかく悪い人しか出てきません(笑)。
——悪い人たちのモチベーションは、ボクシングで金を稼ぐことなんですか?
もちろんそれもあるんだけど、それ以上に興奮を求めているところもあって。すごい金額をベットする瞬間だったり、「ここで大勝したらどうなるんだ?!」という脳みそがひっくり返るような感覚だったり。主人公の毛が逆立つ描写もすごくよくて。自分はギャンブルをやらないんですけど、この作品を読んでると、これも人間の本質なのかなと思います。
『メダリスト』から漂う「現実さ」
——続いては『メダリスト』(つるまいかだ/講談社「月刊アフタヌーン」で連載中)。今年アニメ化された話題のフィギュアスケート漫画です。
『げにかすり』と真逆で、『メダリスト』はイイ人ばっかり出てきます(笑)。ちょっと意地悪な女の子とかもいるんだけど、みんなフィギュアスケートが好きで、それぞれ健気にがんばってるので。
——主人公はコーチの明浦路司と、小学校5年生の女の子・結束いのり。司がいのりの才能を見出し、母親の反対を押し切る形でレッスンを始まるところから物語が始まります。
コーチと選手の関係性がいちばんのポイントですね。フィギュアスケートって小さい頃から始める人が多いと思うんですけど、いのりは5年生なのでかなり遅いんですよ。舞台は名古屋なんですけど、どのチームに入るのか、学校に行きながら練習する方法、スケートリンクの使い方から始まって、地区の大会で優勝した後はどうするのか? 中学生になったら? みたいなところまで、まったくファンタジーがなくて、すごく現実的なんです。自分は全然詳しくないんですけど、たぶんめちゃくちゃ取材して描いてるんだと思うし、そこにしっかりドラマがあるんですよね。
——厳しい世界ですからね……。
そうですね。あと“欲望”や“夢”もこのマンガのテーマなのかなと思っていて。コーチの司は、選手時代に「こうしたい」と思ったことを口に出来なかったんですよ。なのでコーチに付くのも遅くて、現役を引退した後もアイスショーの仕事がなかなか決まらなくて、食い扶持に困ったり。もっと早く「自分はこうしたい」「誰かにサポートしてほしい」と言えばよかった、自分も夢を見てよかったんだと後悔しているところがあるんですよ。
いのりもちょっと近いところがあって。もともとお姉ちゃんがフィギュアをやってて、スケートリンクでちょこちょこ遊んでたんだけど、司が素質を見抜いて「本当にいいの? やりたいんじゃないの?」みたいな感じで説得するっていう。既にめっちゃ人気になってますけど、今年改めてしっかり読み直して「すごいいい話だな」って思いましたね(笑)。
『平成敗残兵すみれちゃん』は“誰にも言わずに読んでる系”
——続いては『平成敗残兵すみれちゃん』(里見U/講談社「週刊ヤングマガジン」で連載中)。平成期の売れない女性アイドルグループに所属していた東条すみれが、従姉弟の高校生の泉雄星と一緒にアイドルとして復活を目指すというストーリーです。
これは“誰にも言わずに読んでる系”ですけど(笑)、面白いんですよ。今アイドルマンガと言えば『【推しの子】』ですけど、あの作品も取材力がすごいなと思っていて。アイドル業界とか芸能界のムードとか、事務所とタレントの関係とか、ドラマの撮影のときはどうだとか、そういうディテールがしっかり描かれているのがヒットの理由の一つだなと。『平成敗残兵すみれちゃん』はもうちょっと下世話と言いますか(笑)。キラキラしていたすみれが大好きだった雄星が「俺といっしょにもう1回やろうよ」みたいになるのが始まりなんですよ。彼はSNSの使い方も分かってるし、お金をかけないプロモーションもやれる、みたいな。すみれはパチンカスになっちゃってるんですけど(笑)。
——確かに(笑)。
中身がおじさんというか、酒は飲むしタバコ吸うし、パチンコもやってて。そういう豪快さがめちゃくちゃ魅力的なんですよ。作った写真集をコミケで売って、売り上げの何割かはスポンサーに返さなくちゃいけないのに、どうしても欲しかったバイクを買っちゃったり(笑)。雄星はしっかりしてるから「何やってんだよ」って尻ぬぐいするんだけど、そういう関係性も面白くて。前の事務所の社長とか、承認欲求モリモリのアイドル時代の仲間とか、「昭和かよ」って言われてるプロデューサーとか、周りのキャラクターもよくて。ジェットコースターみたいに持っていかれる感じではないんだけど、結構エキサイティングな展開もあるし、ずっと読んじゃってますね。パチンコ屋の営業の話もすごくリアリティがあるし、すみれちゃんが営業でもらったギャラをそのままパチンコに突っ込んじゃうのもよかったです(笑)。
2025年は大ヒットがなかった?
——面白そう(笑)。
あと、これは前にも紹介したんですけど、『九条の大罪』(真鍋昌平/小学館「ビッグコミックスピリッツ」連載中)もすごいことになってます。これは自分の勝手な読み方ですけど(真鍋昌平の代表作)『闇金ウシジマくん』は取材したことを描きたい! みたいになって、ウシジマくんが全然出てこなくなったんですよ。『九条の大罪』の主人公は弁護士なんですけど、だんだんウシジマくんと似たような感じになってきて。大麻のことをやたら詳しく描いたり、「これ、どうやって取材してるんだろう?」という感じなんですけど(笑)、めちゃくちゃ好きなんですよ。
『光が死んだ夏』『アフターゴッド』も相変わらず面白くて。“今年はこれ”みたいな大ヒットはなかったかもしれないけど、いい漫画はたくさんあるので、ぜひ読んでほしいですね。
『げにかすり』を読みながら聴きたい音楽
プッシー・ガロア『ダイヤル‘M'フォー・マザーファッカー』
ジョン・スペンサーが在籍したことで知られるロックバンド、プッシー・ガロアの2ndアルバム(1989年)。「ドラマーの他にドラム缶(メタル・パーカッション)を叩くメンバーがいて、ベースレスでトリプルギター、チューニングは禁止らしいです(笑)。『げにかすり』の雰囲気にピッタリかなと」
OKAMOTO’S最新情報
2026年8月に東名阪ホールツアー 「90’S TOKYO BOYS IN HALL“Future Eve”」開催決定!
8月15日(土)(東京)LINE CUBE SHIBUYA
8月21日(金)(愛知)名古屋文理大学文化フォーラム・大ホール
8月22日(土)(大阪)NHK大阪ホール
「オカモトークQ」アプリ会員受付
受付期間:2026/01/09(金) 22:00~2026/01/18(日) 23:59
アプリダウンロード:https://c-rayon.com/lp/okamotos/app/