雨穴が『変な地図』に込めた”エゴ“とは? 新設チャートの授賞式では自作楽曲を披露
小説家・ウェブライターの雨穴が12月16日、都内で行われた「Billboard JAPAN Book Charts」の授賞式に登場した。
ビルボードは事業展開する17カ国の中でも初の試みとして、紙書籍・電子書籍・図書館貸出を横断的に集計する総合書籍チャート「Billboard JAPAN Book Charts」を11月6日にスタート。その第1週目(2025年10月27日~11月2日)の「JAPAN BOOK Hot 100」において、発行部数70万部を突破した雨穴の『変な地図』が記念すべき1位を獲得し、今回の表彰に至った。
ボイスチェンジャーを介した声で登壇した雨穴は、受賞スピーチのなかで作品制作のスタンスについて言及。「本シリーズの過去3作品は100%読者のために書きました。でも今作は30%くらいは自分のために書いています」と語り、『変な地図』では初めて“エゴ”を前面に出したと明かした。
そのエゴとは「本格小説」への挑戦である。雨穴はそれを「主人公が旅に出て、仲間と出会い、成長し、冒険の末に別れを迎える古典的な冒険譚」と説明。一方で「これまでのホラーミステリーの世界観を保ったまま王道をやるのは本当に大変で、完成まで10か月以上かかりました」と振り返り、制作の難しさも率直に語った。
新設された「Billboard JAPAN Book Charts」について問われると、「チャートがあることで盛り上がるきっかけになりますし、その文化やジャンルを残すために必要なものだと思っています」とコメント。また「10人しかファンがいないものが残り続けるためにも、たくさんの人に届く作品が必要」と、セールスやランキングを肯定的に捉える姿勢も示した。
『変な地図』には作者自身による朗読音声のQRコードが収録されているが、音声コンテンツ全般についても関心は高いようだ。Audibleについての質問には、「夜ウォーキングをしながら、イヤフォンでいろいろな本を“読んで”います。普段なら手に取らない本も、音声だと開拓できると気づきました」と自身の読書体験を明かし、「いつかはAudibleに特化した作品も書いてみたい」と今後の創作にも触れた。
また盛り上がりを見せている“考察ブーム”についての是非については「自分自身も考察が好きなので、多くの人がインタラクティブに楽しんでいるのはいいことだと思っています」とポジティブな様子。
だが一方で「『考察の余地がないから楽しくない』というのは少し寂しい」とも述べ、「広い心でエンタメを楽しんでほしい」、「とはいえ1600円という決して安くない値段で買ってもらえるなら、考察でも何でもいいので骨の髄までしゃぶりつくしてほしい」と本音も添えた。
授賞式の最後には、せっかくビルボードのステージに立つのだからと、自作曲を“口パク”で披露。ユーモアと誠実さが同居するパフォーマンスで会場を和ませ、記念すべき初代1位の授賞式を盛り上げた。