哲学者トリスタン・ガルシアによる小説『7』刊行へ 類例をみない“圧巻の構造”の連作長編
トリスタン・ガルシアによる初邦訳作品『7』(高橋啓訳/河出書房新社)が8月19日に発売される。
著者、トリスタン・ガルシアは、ドゥルーズ以降の世代を代表する哲学者。スラヴォイ・ジジェクらへ強い影響を持つアラン・バディウ、その薫陶を受けたカンタン・メイヤスーらのもとで哲学を学び、2011年に発表した思想書『Forme et objet』(未邦訳)、2016年『激しい生――近代の強迫観念』で一躍脚光を浴びた哲学者であり、2008年に発表した小説デビュー作『La meilleure part des hommes』(未邦訳)で仏フロール賞を受賞し、その後の作品もメディシス賞他数々の賞にノミネートされた。
本書は6つの中編小説「エリセエンヌ」「木管」「サンギーヌ」「永久革命」「宇宙人の存在」「半球(ドーム)」と、1つの長編小説「第七」、合計7つの物語から成る連作長編。
リアリズム、ミステリー、SF小説といった、さまざまな手法が駆使され、実験的な試みが盛り込まれるこの7つの物語は、それぞれが独立した小説世界を形成ながら、最後の「第七」で、それまでの6つの物語がひとつにまとめ上げられる。その類例をみない圧巻の構造は「特異かつ驚異的な建築作品」(テレラマ誌)と評された。
■著者紹介
【著者】トリスタン・ガルシア Tristan Garcia
1981年生まれ。フランスの作家・哲学者。パリ高等師範学校、パリ=ソルボンヌ大学で哲学を専攻。アラン・バディウやカンタン・メイヤスーらに哲学を学ぶ。2008年に発表した小説第一作品『La meilleure part des hommes(男たちの最良の部分)』でフロール賞を受賞。2013年に本書『7』でアンテル文学賞を受賞。2016年に哲学エッセイ『激しい生』(栗脇永翔訳、2021年、人文書院)を刊行し、フェミナ賞にノミネート(エッセイ部門)。その後も2019年に「苦しみの歴史」シリーズの第1巻『Âmes(魂たち)』を、2023年に第2巻『Vie contre vie(生に対する生)』を刊行。現在は、リヨン第三大学で哲学の准教授として教鞭を執っている。
【訳者】高橋啓 たかはし・けい
1953年、北海道生まれ。翻訳家。主な訳書に、パスカル・キニャール『アルブキウス』『音楽への憎しみ』『辺境の館』『アプロニア・アウィティアの柘植の板』『アマリアの別荘』(以上、青土社)、フィリップ・クローデル『灰色の魂』『リンさんの小さな子』『ブロデックの報告書』、マグダ・オランデール=ラフォン『四つの小さなパン切れ』、ジェラルド・ブロネール『認知アポカリプス』(以上、みすず書房)、ジョルジュ・シムノン『仕立て屋の恋』(早川書房)、ジョルジュ・ジャン『文字の歴史』(創元社)、ジャック・ルーボー『麗しのオルタンス』『誘拐されたオルタンス』(創元推理文庫)、ローラン・ビネ『HHhH』『言語の七番目の機能』、オリヴィエ・ゲーズ『ヨーゼフ・メンゲレの逃亡』、ポール・フルネル『編集者とタブレット』(以上、東京創元社)などがある。
■書誌情報
『7』
著者:トリスタン・ガルシア
訳者:高橋啓
価格:5,280円(税込)
発売日:2025年8月19日
出版社:河出書房新社