『マルコヴィッチの穴』の鬼才カウフマンによる初長編小説『アントカインド』刊行へ 

 チャーリー・カウフマン著、木原善彦訳の長編小説『アントカインド』が2025年8月下旬に河出書房新社より発売される。

 カウフマンといえば『マルコヴィッチの穴』『エターナル・サンシャイン』の脚本で知られるアカデミー賞作家。

 翻訳は日本翻訳大賞を2度受賞した木原善彦。造本はブックデザイナーの川名潤が手掛ける。書籍本体は黒色の皮革調クロスにレインボー箔が押され、函の透明部分から本体箔が透過する仕掛けとなっている。

■あらすじ

『アントカインド』函なしの書影

 冴えない映画評論家のB・ローゼンバーガー・ローゼンバーグは、インゴという引きこもりの老人が90年かけて製作した、上映時間90日の映画を見る。空前絶後の傑作だと確信したが、上映中にインゴは急死し、フィルムも火事で失われる。

 失われたフィルムを復元しようと催眠療法に励むローゼンバーグのもとに、未来人を名乗る女性アビサがある依頼とともに、映像技術「ブレイニオ」を携え訪れる。ブレイニオにより映画の裏側の「不可視の世界」へ入り込めるようになり、夢・映画・現実の境界が徐々に崩壊しはじめる。

 ローゼンバーグが催眠術で不可視の世界を行き来し、映画復元のための手掛かりを集め続けるうち、映画に登場するコメディアンのマッドとモロイ、さらには自身のクローンなどと出会う。「映画の結末」の記憶を徐々に思い出すが、夢と映画の世界が現実へますます強く侵蝕していく。

 やがて自律型ドナルド・トランク(プ)・ロボットが出現すると、瞬く間に政権の座に返り咲く。大量増殖と暴走の末、巨大ファストフードチェーンと内戦を始め、終末戦争へと突入する。未来の地球で生き残った超天才アリまでもが登場し、全てが混沌の極限へと向かっていく……。

■作家 チャーリー・カウフマン Charlie Kaufman

1958年、アメリカ合衆国生まれ。脚本家・映画プロデューサー・映画監督。1990年代にテレビのコメディ・シリーズの脚本を執筆。2000年公開のスパイク・ジョーンズ監督の長編映画『マルコヴィッチの穴』脚本を務め、英国アカデミー賞脚本賞などを受賞。アカデミー脚本賞にもノミネートされ、一躍世界に知られるようになった。2004年公開の『エターナル・サンシャイン』で、ミシェル・ゴンドリーとピエール・ビスマスと共にアカデミー脚本賞を受賞した。『マルコヴィッチの穴』のカウフマンによる初長編小説『アントカインド』刊行へ現在、米アマゾン・スタジオが手がける小川洋子原作『密やかな結晶』映画版の制作に、リード・モラーノ監督とタッグを組み、脚本家として参加している。

■書誌情報
『アントカインド』
著者:チャーリー・カウフマン
翻訳:木原善彦
価格:15,400円(税込)
発売日:2025年8月下旬予定
出版社:河出書房新社

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