『葬送のフリーレン』『ポーの一族』に通ずる注目作ーー大河ファンタジー『鬼人幻燈抄』の魅力とは
そして舞台は「平成」へ
甚夜の戦いは、幕末の江戸でもしばらく繰り広げられ、付喪神使いの三代目秋津染五郎であったり、捨て子だったところを預けられて娘にする野茉莉だったりと、新しいキャラクターを加えて広がっていく。そこから「明治編」へと入って舞台を京都へと移し、マガツメと呼ばれる鬼の首魁となった鈴音との直接的な対峙へと向かう。
マガツメは自分の感情を切り離し、それを分身とも娘とも言える独立した鬼として送り出して甚夜と対決させる。京都へと戻った盟友の三代目秋津染五郎を失い、娘の野茉莉とも離別を余儀なくされる。悲嘆に暮れて涙を流す甚夜だったが、孤独に沈んで邪悪な鬼となることはない。四代目からさらに系譜を連ねていく秋津染五郎との交流が続き、野茉莉の名前が冠された菓子が後の時代まで銘菓として受け継がれていく時代を生き続け、最後の「平成編」へと至る。
斬るべき敵ではなく友人として出会った鬼たちも生き続けて、甚夜がひとりぼっちにさせない。マガツメが生み出した娘のうちの向日葵は、悪事を成すことはなく甚夜の側で共闘するような動きを見せ、その後の「大正編」にも登場して活躍する。その「大正編」では渋谷の映画館で働く少年と子爵家の令嬢との出会いが描かれる一方で、怪異を生み出そうとする企みを甚夜がくじく。いつの時代も変わらないカッコ良さを見せる甚夜が読みどころであり、アニメでは見どころとなるだろう。
そして「昭和編」を経て迎えた「平成編」で、甚夜は高校生として学校に通いながら同級生たちの関わる怪異と対峙し、マガツメとの決戦に向かうことになる。アニメの中にも現代を生きる女子高生として姫川美夜香が登場して、物語がそこまで続くことを示しているが、浪人のような風体の甚夜が果たして平成の時代にどのような姿で登場してくるかが、今から気になって仕方がない。
アニメの第一話で、美夜香を尋ねる学生服姿の男子がそうだとしても、本格的に動き喋った訳ではない。どうなるのか? アニメでそこまで描かれるのか? コミカライズの方も最新の『鬼人幻燈抄8』(双葉社)でようやく「幕末編」に入ったばかりで、完結は先になりそう。共にその時へと至ることを願って待ち続けつつ、文庫化が進む原作を読んでいこう。