「全盛期のジャンプを目指す」KADOKAWA初の“週刊連載”電子コミックマガジン「MANGAバル」編集長・人見英行インタビュー

出版社×書店系アプリという大きな可能性

ーー紙の雑誌との違いでいうと、どの作品が何人に読まれたか、明確にデータが出ますね。

人見:そうですね。自社媒体とのユーザー層の違い、読まれ方の違いというものもデータとして出てきますので、プラットフォームによって読まれる作品は違うんだな、ということも学びになっています。

 紙の雑誌としてコンビニに並んでいるわけではないのでわかりづらいところもありますが、店舗での立ち読みでなく、さまざまな情報が「ウェブ雑誌」でチェックできるようになっているなかで、漫画の連載立ち上げもウェブから発信される形にどんどん変わっていくと思います。そのなかで、出版社系のアプリだけでなく、出版社が書店系アプリさんと組んで連載媒体としてやっていく、という「MANGAバル」の試みはアリなのではないかと。

「MANGAバル」編集長・人見英行氏

ーー出版社の制作力と書店系アプリの拡散力が噛み合ったときに、大きなシナジーを生む可能性があると。

人見:そうですね。例えば弊社のコミックサイト「カドコミ」だと、読者はある意味で玄人というか、漫画を日頃からよく読んでいて、一定程度「KADOKAWAの作品だ」という意識も持った上で作品を楽しまれていると思います。その点、ピッコマさんの読者はもう少しライトだというか、じっくり漫画を楽しむというより、暇つぶしで来られる方もいるので、「当然、われわれのことは知っていますよね?」「こういう作品なら読みますよね?」という感覚では通用しない。だからこそ、そういうユーザーも気になって読んでしまうような作品の強度が求められますし、そういう環境だからこそ、デジタルボーンで100万人に読まれる作品が生まれ得るのではと。

ーー紙の雑誌であれば、好きな作品を読むために購入して新連載も読む、ということがありますが、書店系アプリ内での雑誌であれば、他社作品も含めて膨大にある人気作も並んでいるなかで目立たなければならない、というハードルがあると思います。その反面、多くの人気作との関連性から目に止まる、という接触機会の多さがメリットになりそうです。

人見:そこがまさに、出版社系アプリと書店系アプリの大きな違いだと思います。だからこそ、雑誌としてのコンセプトを限定せず、「100万人に読まれる、新しいヒット作を生み出す」ことにフォーカスしており、初見の読者の方にも楽しんでもらえる丁寧な誌面づくりを心がけています。

ーーなるほど。初速だけを考えれば、アニメ化作品のスピンオフや、さらに有名な作家を起用するなど話題を作ることはできたはずですが、「書店系アプリ発の新雑誌」としての可能性を追求しているということですね。

人見:そうですね。KADOKAWAブランドを活かせる作品は「カドコミ」で展開すればいいと思うんです。従来の出版社系アプリですと、かなり意識の高い読者さんが集結していて、新連載が始まるとアプリ内のポイントバックなどのキャンペーンも含めて第一話への誘導があり、そこから好みによってお客さんが脱落していく、という傾向がありました。しかしMANGAバルの現状の傾向としては、読者が日増しに増えており、連載が進むにつれて「好みの作品だ」と気づいた読者が新たに参入してきてくれています。まさにリアルの書店に本が平積みされているような感覚で、このまま成長していき、規模が大きくなればアプリ内にとどまらず、リアルイベントなども開催できたらと考えているところです。100万人が読み、教室で「今日はあの漫画の更新日だね」と盛り上がる作品を生み出せるよう、チャレンジを重ねていきたいですね。

「MANGAバル」編集長・人見英行氏

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