『スキップとローファー』ファンブックを満たす“優しい空気” 制作現場の丁寧な仕事と工夫が伝わる1冊に

原作の良さを映像に落とし込んだ制作スタッフの工夫

 また本書のもう一つの大きな見どころが、メインキャスト・スタッフ総勢10名による充実のインタビューだ。やはり話題を呼んだ作品とあって、『スキップとローファー』には、これまでにもすでに数多くのインタビューが存在する。しかし本書では、普段なかなか聞くことのできないチーフ美術、撮影監督、色彩設計といった制作に関わってきたスタッフたちの声までもが詰まっており、TVアニメならではのこだわりを知ることができる特別な内容となっている。

 例えば、出合小都美監督がこれまでの取材でも語ってきた写真家・濱田英明氏の写真を参考にした画づくりを撮影監督の視点から語るページのほか、キャラクターたちの印象的な装いづくりに、監督が持ってきた高校生向けのファッション誌を参考にしていたエピソードを色彩設計のスタッフが明かすなど、作品の第1期がすでに放送が終わっている今だからこその深い内容が続く。

「原作の素晴らしい世界をいかにアニメーションに落とし込んでいくのか」という制作現場の試行錯誤と工夫が、随所から伝わってくる本書。ページをめくるたびに手に取るように感じられるのは、アニメシリーズに関わる創り手たちの丁寧な仕事と作品への思いだ。みつみたちと過ごした大切な時間の数々が、このファンブックを開くたびに優しく蘇ってくるはずだ。

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