JA共済22億円超の横領事件はなぜ対馬で起こったか? 不正の構図に迫るノンフィクション『対馬の海に沈む』
しかも著者の追及は、さらに深いところまでいく。ここから先は是非とも本書を読んで、それぞれに受け止めて欲しい。この事件が、けして他人事ではないことが理解できるだろう。著者が感じた恐れは、私たちの恐れでもある。西山という個人、対馬のJAという限られた範囲を越えていく事件の〝真相〟は、底知れない恐ろしさにまみれているのである。
なお著者は、西山の人間性も深く掘り下げており、単なる悪人として描いていない。横領を重ねていくうちに、さまざまな状況に追い詰められ、結果的に死を迎えたのではないかといっているのだ。西山ひとりに罪を押しつけ、終わりにしていいのか。本書で知ってしまったからには、これからもこの件について注視していきたいものだ。