『呪術廻戦』は“邪道”ではなく“王道”だった? 山田風太郎「忍法帖」シリーズから紐解く、チームバトル漫画の系譜

なぜチームバトル物は受けるのか

 ちなみに、その山田の「忍法帖」シリーズにしても、『水滸伝』や『三国志』、あるいは、『南総里見八犬伝』などの“元ネタ”がある。だから、チームバトル物のルーツを掘り下げることにはあまり意味がない、ともいえるのだが、1つだけ断言できるのは、こうした「複数のヒーロー・ヒロインが敵味方に分かれて闘う物語」が、古来より、大衆が求めるエンターテインメントの定型(の1つ)だったということだ。

 通常、漫画に限らず「物語」というものは、1人の強烈な個性を持った主人公を中心に組み立てていくものだと思われがちである。しかし、それだと、その主人公に共感できない読者はしだいに物語から離れていくことになる。

 逆にいえば、主役級のキャラクターを何人も登場させている物語には、その1人1人にファンがつく可能性が高い、ということになりはしないだろうか。そうなると、必然的に、作品を支持する読者の数は(それぞれのキャラのファンのぶんだけ)増え、自然とヒットに繋がっていく――。

 いずれにせよ、現代の日本の少年漫画においては、強烈な個性を持った主人公とは別に、“キャラの立った”登場人物を複数(敵側にも味方側にも)配置させる必要があるのだろう。実は近年、その方法論を最も理解しているのは、「ジャンプ」系ではなく「マガジン」系の作家陣であり、たとえば、『東京卍リベンジャーズ』(和久井健)、『ブルーロック』(金城宗幸・ノ村優介)、『青のミブロ』(安田剛士)などは、「忍法帖」シリーズの基底構造を巧みに取り入れたうえで成功している。

 個人的には、『呪術廻戦』が終わったいまこそ、「少年ジャンプ」発の新たなチームバトル漫画の誕生に期待したいところである。 

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