四千頭身・後藤拓実「タワマンにトラウマがあるんです」 浮き沈みの多かった5年間を振り返って

「すぐに売れてテレビとかに出ちゃうと、人間、良くないです」

ーー5年間、時系列でコラムが並んでいますが、最初と後の方では変化を感じます。

後藤:このコラムに限らずですが、住む家もそうですし、全部、変わりましたから。5年間のすべてが載っていますけど、やっぱり最初の頃はナメていますね。

ーー2019年、とても勢いのあった頃です。

後藤:やっぱり若いときにデビューして、すぐに売れてテレビとかに出ちゃうと、人間、良くないです。楽勝だと思っちゃって、将来は安泰だと思っていたんですけど、そうはいきませんでした。大物芸人たちにもすぐ会えましたし、大きな番組にもすぐ出られて「これにもう出られるの?」みたいな感じで。うれしいっていうより「そりゃそうだろう、当たり前だろう」みたいな感じで仕事に臨んでしまっていました。

ーーその感覚は、どこでどう変わったんですか?

後藤:まわりの芸人さんをよくよく見ると、売れていなくてもみんな面白いんです。そういう人たちが今、売れているんです。それを見ているうち、売れるのは簡単なことじゃないよなって、だんだん思い始めて、意識が変わっていった感じです。

ーー具体的にどう変わったのでしょう?

後藤:もっとまじめに取り組まなきゃ、という感じです。2023年のアタマぐらいです。

ーーその変化を知って本書を読むと、見え方も変わるかもしれません。具体的な変化としては、タワマンから引っ越したことが大きいのでしょうか?

後藤:住んでから変わったんです。住み始めてから雲行きが怪しくなって。タワマンに憧れはなかったんですけど、ウケると思って引っ越して、そのことを言ったら「調子に乗っている」とか言われ始めて。外車に乗ったときも「なにしてんだよコイツ」みたいになるかなと思ったら、全然、ウケなくて、ただ調子に乗っている感じになっちゃいまして、作戦失敗でした。

 芸人って派手な人が多いイメージだったんですけど、その当時の芸人は売れていてもまじめな人が多かったんです。僕のすることに感化されて、みんなもお金をいっぱい使って「芸人は豪快だぜ」みたいに燃え上がるとか、いいパターンしか考えていなかったんです。でも、霜降り明星のせいやさんに外車を買ったことを伝えたときも、「事故とか気をつけろよ」とか心配されて、あれれってなりました。

ーータワマン・外車購入作戦は思うようにいかなかったんですね。そこからお笑いに対する姿勢が変わったんですか?

後藤:ネタに対する考え方は変わらないんですが、取り組む姿勢です。テレビ番組も出られるものが限られているので、手を抜かないようにしようと。『有吉の壁』もオープニングの立ち位置がどんどん奥になっていって、今は最後列の一番はじっこなんで、本当にマズイんです。ライバルが多いのでいろいろ成績を残していかなきゃと思っています。

ーー今年の『M-1グランプリ』では準々決勝で惜しくも敗退となりました。今は、四千頭身として、腰を据えてネタをお笑いをやっていこうという感じなんでしょうか?

後藤:やっぱりネタをしっかりやっていれば、見てくれる人はちゃんと見てくれると感じているので、ネタかなと思います。

ーー執筆は続けるのでしょうか?

後藤:お話をいただければ別ですけど、本にもなったので、しばらくはそれよりネタかなと思っています。

ーーネタでもう一度大きく売れて、またタワマンに戻る気はありますか?

後藤:タワマンですか? ウケますかね? タワマン行ったときもウケずに、引っ越してタワマンから落下したとか言われたときもウケず、タワマンにトラウマがあるんです。住みたいって気持ちは正直、ないんですけど、ウケるタイミングが来たら、僕はいきますね。

 もうちょっと露出が増えるようになったら、狙っているのが川口のタワマン。川口はタワマンがいっぱいあるんですよ。豊洲じゃ違うんです。後藤と言ったらタワマンだよね、みたいな人もいると思うので、いつかネタでタイトルを獲ったときに、川口。これはジョーカーなんですけど、またすべってしまう可能性もあるんです。それが怖いので、今度は慎重にいきたいと思っています。

■書籍情報
『安心できる男』
著者:後藤拓実
価格:1,760円
発売日:12月6日
出版社:中央公論新社

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