【推しの子】エンディングに議論紛糾……「雑な展開」「バッドエンド」は正当な評価か、漫画編集者&ライターに聞く

 島田氏も単純なバッドエンドとは捉えていないようだ。想定できたエンディングを考察しつつ、実際の最終回に「納得感があった」と語る。

「これが多くの読者を傷つけない、ご都合主義的なエンディングになったらどうだったか。たとえば、アクアが作った映画でカミキヒカルが社会的に裁かれ、ルビーはアイドルとして成功し、アクアは医者か脚本家になって、ヒロインの誰かと結ばれる。そして二人はアイの志を受け継ぎつつ、第二の人生を歩んでいくーーそれはそれで読んでみたくはありますが、心に残らなかったかもしれません。

 アクアの“今回の人生”の目的が、前世で医者として見守ったアイドルを夢見る『推しの子』であり、『(星野アイという)推しの子(ども)』であるさりな/ルビーを守ることであったと考えると、彼もまたある意味では夢を叶えている。ルビーはその思いを受け継ぎ、打ちひしがれることをやめて前進しており、“継承と成長”という漫画の王道を踏まえた、感動的なエンディングとも言えるのではないかと。赤坂アカさんの作家性を考えると、もっと衝撃的な終わりもあり得ましたし、夢オチも成立しやすい物語でしたから、個人的には納得感があってよかったと思います」(島田氏)

 読者に様々な衝撃を与えてきた作品だけに、SNS上ではエンディングにフォーカスした意見があふれているが、あらためて『【推しの子】』はどんな作品だったのか。

「復讐劇とサクセスストーリーという、一見、噛み合わない陰と陽の要素を組み合わせて、ブレずに上手くまとめた印象があります。最近のヒット作の傾向でもありますが、無駄に引き延ばさず、物語やキャラクターが求める適度な長さで終わらせたことも、評価されていいと思います」(島田氏)

「嘘は愛、というアイの言葉の意味を、いろんな角度から考えさせられる最終巻でもあると思いました。いろんな人の、嘘。いろんな人の、愛のかたち。受けとめる過程で、ときに歪んでしまう愛。そして連鎖していく嘘。でもそのすべてを、希望に変えて世に輝きとして解き放つ、アイドルという存在を本作では描きたかったのかなあ、なんて考えたりもしています」(立花氏)

 さながら“究極のアイドル”のように、多くの読者の心をつかんだ作品だからこそ、賛否両論が巻き起こっている『【推しの子】』。すでに話題になっているアニメや実写映像化のほか、さらなる展開で一度離れたファンの目を再び釘付けにできるか、期待したいところだ。

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