この時代の日本に生まれることが出来て良かったーー小さいが確かな輝きに世界が満たされる短編集『街角ファンタジア』

 以下、「閏年の橋」は、デビュー以来、イヤミスを書き続けている女性作家が、懇意の編集者からほっこりした作品を求められ、自分の人生を振り返る。「その夏の風と光」は、戦争中に死んだ少年の幽霊と、同年代の人と馴染めず物語の世界に浸っている少年が、夢の中(と思われる)で邂逅する。ラストの「一番星の双子」は、アルバイター兼零細ライターの女性が、子供の頃の大親友のことを回想する。どの話も、主人公にささやかな奇跡が訪れ、小さいが確かな輝きに世界が満たされるのだ。このように素敵な短篇集を、新刊で読むことができるのも、この時代の日本に生まれたからこそだろう。最後に、あらためて本書の「あとがき」に目を通し、またもや大きく共感してしまったのである。

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