「次にくるマンガ大賞2024」Webマンガ部門1位『ふつうの軽音部』これまでの“バンドもの”とは何が違う?
8月28日に発表された「次にくるマンガ大賞 2024」にて、『ふつうの軽音部』がWebマンガ部門の1位に輝いた。同作は女子高生たちを主人公としたバンドもので、一見すると王道……というよりありふれた設定のマンガに見えるかもしれない。しかし実際には、“ふつうなのにふつうじゃない”エッジのきいた魅力こそが読者のハートを掴んでいる。
同作は2024年1月より「少年ジャンプ+」にて連載が行われている作品。あらすじとしては、高校進学をきっかけにギターを始めた女子高生・鳩野ちひろが軽音楽部に入部し、バンド仲間たちを見つけていく……という流れとなっている。
初めてのギターを買ったり、初めてのバンドを結成したりと、ギター初心者が徐々にステップを上がっていく様子が描かれており、設定だけ見ると至ってオーソドックスだ。古くは『けいおん!』、最近では『ぼっち・ざ・ろっく!』のようなガールズバンドものに近いところもある。
『ぼっち・ざ・ろっく!』に近いといえば、主人公の“秘めた才能”に関する描写は1つの共通点だ。“ぼっちちゃん”こと後藤ひとりは元々ギターの腕前が一級品で、動画投稿者として高い評価を得ていたほどだが、人前で実力を発揮できないという制約があった。それに対して『ふつうの軽音部』のちひろは人の心を震わせる歌声をもつが、メンタルの弱さからあまりその才能が周囲に気づかれていない。泥臭い努力と成長を経て、才能がきらめく瞬間をつかみとる展開は、王道ではあるが誰もが興奮を覚えるはずだ。
しかし同作ならではの特徴として、“ふつうさ”をリアルに描いているという点は印象的。たとえば序盤にちひろは元ナンバーガール・向井秀徳も使用しているフェンダーのテレキャスターというエレキギターを買うが、その直前には「初心者の私がそんな高いギター買う必要あるか!?」と葛藤していた。ギターを経験したことがある人なら、「あるある」と共感できる描写だろう。
また軽音楽部のドロドロとした人間関係も描いており、ちひろが最初に結成した「ラチッタデッラ」は女子2人、男子2人による男女混合バンドだった。詳細は省略するものの、そこではちょっとした恋愛絡みのトラブルが巻き起こる。さらにその後も、軽音楽部内で生々しい人間ドラマが繰り広げられる……。
外から見るとキラキラとした青春でも、高校の部活には惚れた腫れたの“ダサい”トラブルが付き物。それを正面から描いているのが、同作の斬新さではないだろうか。