「資本主義はそもそも道徳的で良いもの」 マルクス・ガブリエル『倫理資本主義の時代』講演レポ
具体的な事例も挙げられた。例えば、Facebookが「いいねボタン」を取り入れたことによって「神経に対する搾取を行った」と解説。同社はそうなることを予見していたにもかかわらずに導入したことを批判した。またイーロン・マスク率いるテスラやXについても、同様に道徳的でないために持続可能ではないとする。
一方、倫理資本主義のよい例として挙げられたのは、ドイツの翻訳AIツール「DeepL」。「言語能力が素晴らしく向上する」ツールで「Open AIのようにデータ利用上の著作権も侵害しておらず」「ユーザーフレンドリー」だと評価する。こうした道徳的に優れたサービスが「市場の競争に生き残る可能性が高い」という。
講演の最後にはそうした倫理資本主義を実装するための具体的な方策についても語られた。単に直感的に進めていくのではなく、それを測定する指標を設けることを提案する。経済力を示すGDPのような指標だけではなく、クオリティ・オブ・ライフをはじめ、他の指標を導入しながら計測することを例に挙げた。
また「倫理資本主義」の専門家を養成すること、その上で領域横断的な学際的な協力が重要だと呼びかけた。人文科学や社会科学が統合し協力し合うことが重要なのだという。そうした「倫理資本主義」の実践によって、最終的には「リベラルな民主主義、そして自由を守っていくこと」ができると主張した。
■書籍情報
『倫理資本主義の時代』
著者:マルクス・ガブリエル
監修:斎藤幸平
翻訳:土方奈美
価格:1,320円
発売日:2024年6月19日