井上咲楽×Hana 人気レシピ本作者対談――“仕方なくの自炊”が“楽しい”に変わった瞬間は?

■疲れきってめんどくさい……自炊はどうする?

疲れたときの自炊はお互いに共通する点は汁物。井上さんは味噌汁、Hanaさんはスープをつくるという

井上:レパートリーを広げていくのも大変そう。

Hana:基本的には祖母や母からもらったレシピをもとに、自分なりにアレンジしているのですが、外食したときにおいしかったものを写真に撮ったり、食べていないものでもメニューを撮影しておくようにしています。

――ちなみにお二人は、どうしても面倒だ!  というときは、どんな料理をしているのでしょう。

井上:私、めんどくさいときは具なしのお味噌汁で済ませちゃいます。カップに鰹節とお味噌を入れてお湯で溶くだけ。自分の「あの味」が食べたいけれど自炊する元気もないってときは、具なし味噌汁に冷凍してあるごはんに納豆か卵をかけるだけ。元気なときに、ショウガをすったものもジップロックに入れて冷凍しておくと、そういうときに折って使えるので便利です。母からの受け売りですけどね。

Hana:私は具だくさんのスープかな。余っている野菜とか、ありものをなんでも入れて、味つけをしてそれで終わり。考えなくていいし、簡単だけど、食材を無駄にしなくてすむし、体にもいいから罪悪感がないんですよね。

■料理をより楽しくする道具や器

――道具へのこだわりはありますか?

Hana:実をいうとあんまり凝っていなくて、百均のもので済ませていたくらいなんです。でも最近、パン切り包丁やペティナイフを用意して、とても使いやすくて今では手放せなくなりました。咲楽さんのYouTubeでは、ときどきご実家で料理する風景も映し出されますが、フライパンなど、一つの道具に対していろいろな種類のものが揃えてあって、お母さまのこだわりを感じます。なにか、おすすめの道具があったら、教えてほしい。

井上:最近、スライサーとすりおろし器がセットになっている「Qシリーズ」というのを買ったんですけど、これはおすすめです。今まで、すりおろしという文字がレシピにあったらその時点でつくるのをやめるくらい、面倒くさくて嫌いだったんです。でも、この道具を買ってからものすごくラクになって。人参シリシリも簡単につくれちゃうし、大根おろしも気軽に用意するようになりました。

Hana:大根おろし、あれば活用するけど、つくるのはめちゃくちゃ面倒くさいですよね。

井上:そうなんですよ。みぞれ煮とか大好きなのに、面倒すぎてつくれなかったのが、かなりハードルが下がりました。

Hana:咲楽さんは、盛り付けの器にもこだわっていますよね。どこで買うんですか?

井上:地元が益子という焼き物で有名な町なので、自然とそういうお皿を使うようになったんです。料理本でも、半分くらい、自分のお皿を使っています。スパイスカレーのお皿は今でも欠けたものを使っていて。縁起悪いからやめたほうがいいってよく言われるんですけど、盛りつけするのに問題はないし、たいして欠けてないからいいじゃん、って(笑)。

Hana:本当だ、よく見てみたら! でも逆に味わいがあって素敵、というかもともとこういうデザインなのかと思っていました。

井上:Hanaさんのレシピ本にも、愛用の食器を紹介するコーナーがありますよね。海外のお皿もあって、日本の焼き物とはまた違う魅力があります。

Hana:そうですね。ついアレコレほしくなっちゃうけど、買い足すときはできるだけ必要なものに絞るようにしています。この料理を載せるお皿がほしい、みたいに、ちゃんと使い続けられるものを。

井上:1週間2000円というくくりもそうですが、Hanaさんの本はみんなが「自分もやってみよう」と思えるのがいいなと思うんですよ。私、白ワインビネガーとか、あんまり使わない調味料が出てくると、それだけで諦めちゃうことが多いんですけど、そういうことがまるでない。初心者でも挑戦しやすいレシピのやさしさだけでなく、食材の手軽さもふくめて「やめておこう」と思うところが一つもない。日本全国どこにいても誰でもできる、つくる人に寄り添ったレシピ集だなと。

Hana:とてもうれしいです……。一人暮らしをしていると、落ち込んだ気分をどうにも持て余してしまうときってあるじゃないですか。そういうときに誰もが「この本を開けばちょっと気分転換できる」と思えるようなレシピを集めたいなと思ったんですよね。だからなるべく、誰にでもつくりやすいように、いろんなシチュエーションでレシピを選べるよう、工夫したつもりです。だからタイトルも「ひとり暮らしごはん」にこだわりました。

井上:食材の索引がついているところも、すごく好きです。

Hana:読み込んでくださって、ありがとうございます。咲楽さんの本も、おっしゃっていたように特別な調味料はほとんど出てこないし、なじみのある食材なのにはじめて出会うようなレシピばかりで、写真を見ているだけでわくわくします。まずは塩こうじを導入してみようと思いました。あと、スライサーも。

井上:ぜひ! これからも、気負わず楽しく、自分が飽きないように料理を続けていきたいですね。

Hana:そうですね。今日はとても励みになりました。ありがとうございます。

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