植物は著作物なのかーー弁護士に聞く『観葉植物パーフェクトブック』クレジット問題の争点

ーーそもそも、「出版物の奥付にはこういった内容を記載しなくてはならない」という法的な規定などはあるんでしょうか?

 奥付表記の具体的な法的規定はありません。奥付自体は江戸時代の和本に由来する物で、明治時代から戦前・戦中にかけてまでは出版法という法律によって記載が義務づけられていました。出版法によって義務付けられたのは、発行者の住所氏名、発行年月日、印刷社の住所氏名、印刷日で、これを文書図画の末尾に記載することが定められました。この出版法は出版物の取り締まりを目的としており、政府が出版物への検閲を行なうことを定めていたため、終戦後に廃止になっています。ただ、奥付の記載ルール自体は出版業界の慣習として生き残っているため、現在でもあの形の奥付けが掲載されています。

ーーそういった経緯があったんですね。では、現在の奥付は特に法的な規則で掲載されているわけではないんですね。

 そうですね。奥付と似たようなものに映画のエンドクレジットがありますが、あれも必ず流さなくちゃいけないというものではありませんよね。昔の映画だと映画の冒頭に出演者や主要スタッフの名前がざっと出て終わりだったりしますし、今だって完全にスタッフ全員の名前が出ない場合もあります。あくまで業界の慣習として、「この著作物にはこういう人が関わりました」ということを列挙しているだけで、時代と共に記載ルールや形式が変化しています。奥付もそれに近いところがあります。

ーーなるほど。では「協力者の名前を出版物に書くかどうか」は、法律上の問題ではなく純粋に慣習や道義上の問題と言えそうですね。

 「深く協力してくれた人の名前を出版物に記載しない」ということ自体は道義的に問題になるのは理解できます。ただ、あくまで第一に契約の問題であって、法的な問題とするのは難しいでしょうね。

ーー「出版物のクレジット」というのは、法律ですっぱりと割り切れない、ある意味で複雑な問題なんですね……。

 

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