自民党派閥の裏金問題で再注目 渡辺恒雄『自民党と派閥』今読む“意義”と外れた“予言”

 「大衆に訴求するポピュリスティックなリーダーシップを求めていた渡辺恒雄が目を付けるのが、自民党総裁選で不利な小派閥を率いていた中曽根康弘でした。それが結果的には大成功しています。この本の予言それ自体は当たらなかったものの、中曽根のようなタイプの政治家が今後、支持を得ていくはずだという見立ては当たっていた。誰を味方につけるべきかを見極める力は確かで、そこに渡辺恒雄という政治記者の特性があったと言えるかもしれません」

 改めて、派閥解消が謳われる中で本書を読む意義はどこにあるのだろうか。

 「本当に派閥が解消されるのであれば、確かに自民党の歴史における大事件ですが、派閥解消論は昔から何度も繰り返し唱えられてきたことで、まったく珍しいことではありません。投票で総裁を選ぶ総裁公選制がある限り、派閥は自然発生的に生まれるし、金かポストかはともかく、なんらかの相互取引は行われるでしょう。声高に派閥解消を叫んだところであまり意味はないということが、この本から得られるさしあたりの教訓でしょう。ただし、「保守」多党化に向かうかはともかく、「保守」陣営におけるある種の揺らぎや地盤沈下が生じつつあるのはどうやら確かな中で、自民党の派閥政治の「その後」を展望しようとしていた渡辺の仕事に学ぶことは多いと思います」

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