『ウルトラマンアーク』辻本貴則監督が期待されるワケ 『HiGH&LOW』シーズン2で示した力量
ハイロー屈指の人気キャラである轟の初登場となるエピソードだが、まず初登場時の轟の見せ場が素晴らしい。ぱっと見メガネのガリ勉に見える轟を「車が三つだから、三輪車だ〜!」と舐め腐った鬼邪高の不良に対し、机の上に飛び上がっての飛び蹴り一閃、激重な轟の蹴りの前に雑魚の不良は吹っ飛んでいく。そして返す刀で脇の不良にアッパーを喰らわせると、不良の体は空中で一回転し、もんどりうって教室の床に転がるのである。さらに自分がぶちのめした不良をヘラヘラしながらスマホで撮影する轟の姿を見せることで、「あ、こいつは格が違うんだな」と視聴者の脳裏にしっかり印象付ける。唐突に登場した強キャラのヤバさを短時間で説明するシーンとして、100点満点だ。
さらに力が入っているのが、村山と轟が雌雄を決する8話の決闘シーンである。演者の全身が入る引いたアングル(おそらくロケーション的に水平方向の引きじりがなかったので、わざわざカメラを上方向に持ち上げている)で素早く手数の多い打ち合いを見せたと思えば、重い打撃は音や動きを使って描き分け、さらにスローモーションで止め絵のかっこよさも表現する。轟が膝蹴りで村山を蹴り飛ばし、吹っ飛んだ村山がロッカーに突っ込んでいくカットのカッコよさたるや……。やはり辻本監督のアクション筋はマジである。
直近のハイローは鬼邪高をメインに据えた映画が連続で作られているが、シリーズ開始当初の予定では鬼邪高はちょっとしたかませ犬程度の出番に収まるはずだったという。それをひっくり返して単独の映画まで製作させた理由には、間違いなく山田裕貴ら俳優の気合と熱演もあるが、個人的にはこの7〜8話の存在も大きかったと思う。「鬼邪高には全日と定時があり、定時のほうが悪い」という他のチームにはない二重構造が描写され、「定時の村山、全日の轟」という枠組みが導入されたのは7〜8話であり、その後の鬼邪高単独ドラマ&映画は基本的にこの枠組みをベースにしているからだ。現在までのハイローの流れを決定づけた(のではないかとおれが勝手に思っている)エピソードを監督したのが、辻本監督なのだ。
ウルトラマンの話のはずがハイローのことばかり書いてしまったが、要はそのくらい辻本監督の担当したエピソードが名作なのである。不良の殴り合いをウルトラマンに置き換えて、アクションの達人がいかに暴れ回るか、期待しながら放送を待ちたいと思う。