【出版動向】2023年コミック市場、2.5%増の6937億円で6年連続プラス 電子約7割のシェア、紙はどうなる?
■コミック市場はプラス成長になった要因は?
出版業界の調査研究機関である(公社)全国出版協会・出版科学研究所は、2023年(1月~12月期累計)のコミック市場(推定販売金額)を発表した。漫画単行本などのコミック市場は2.5%増の6,937億円となり、紙は8.0%減の2,107億円、電子は7.8%増の4,830億円となり、電子の躍進が顕著に数字に表れる結果となった。
コミック市場は6年連続のプラス成長となり、市場のシェアは紙が30.4%、電子が69.6%で、約7割が電子の売上となった。スマホで漫画を読む文化は10~20代に完全に定着しており、今後も市場拡大は見込まれそうだ。
深刻なのは、従来の単行本、紙コミックスである。紙コミックスが8.2%減の1,610億円、紙コミック誌は同7.4%減の497億円となった。同研究所の分析によると、紙コミックスはコロナ禍の巣ごもり需要の拡大や『鬼滅の刃』の記録的ヒットから2020~21年に大きく伸びたものの、22年になると沈静化。23年は19年の販売金額を下回る結果となった。
近年も、『【推しの子】』や『葬送のフリーレン』などのアニメ化作品が話題となるケースが多いが、紙コミックスは新刊の売上が中心となり、しかも売れ行きが「一部の上位作品に集中し、幅広く売れる状況に乏しくなっている」と、同研究所は分析する。さらに、上位の販売水準も目減りし、全体では1割近い減少となっているという。今後も紙コミックスの市場縮小は進みそうだ。
コミック誌の部数減はもはや歯止めがかからず、コロナ禍以降に著名な雑誌が次々に休刊に追い込まれている状況にある。最近でもアニメ化作品を抱える「月刊アクション」の休刊が漫画ファンの間で衝撃をもって迎えられたが、部数の減少が続き、紙で行われていた連載をwebやアプリに切り替えるケースがここ数年で多く見られるようになった。
さて、同研究所によれば、電子コミック市場は「22年より伸び幅はわずかに縮みましたが依然として好調に推移」と分析。映像化作品など紙でもヒットしたものだけでなく、ストア独占・先行配信作品の強化や電子オリジナル作品、縦スクロールコミックの好調が市場を底上げしているという。
また、各社が過去のヒット作の掘り起こしを行い、再ブームを生み出しているのも特筆すべきポイントである。具体的には、「ピッコマ」で取り上げられた『トリコ』や、広告出稿した『コウノドリ』などが人気となっているという。電子で大ベストセラーとなっている名作と言えば『静かなるドン』が有名だ。名作が発掘できるのは電子の圧倒的な強みであり、流れがどこまで拡大していくのか、注目される。