劇場アニメ化決定の『ルックバック』、注目は“後ろ姿”の描写? タイトルの意味とメッセージを考察

 ちなみに作中ではパラレルワールド的世界で生きる藤野の姿も描かれる。その世界の藤野は空手家として奮闘していたが、そこでは藤野の背中は一切描かれない。京本と再会し話す際も藤野は担架に縛り付けられており、誰かに背中を向けることさえできなかった。

 そういえば小学4年生のとき、京本の作品を目にする前の藤野は最後方の席に座っていたため、学級新聞を後ろの席へ渡すために“振り返る”必要なんてなかった。

 何度も振り返り、ときにショックを受け、それでも前を向きながら歩む人生。そして後ろを振り返らず、ただ前を見て歩む人生。はたしてどちらが正解なのか、幸せなのかーー。その答えはわからないが、ときに背を向け、ときに振り返る藤野を描いた本作は、何度も振り返る人生をたしかに肯定してくれるように感じる。

 劇場アニメ化の特報映像では藤野の背中が描かれていた。ただ藤野の向かう机の上に手鏡が描かれており、そこには彼女の表情が映っている。映画では漫画で幾度と目にした藤野の後ろ姿とともに、その時々の藤野の表情を目にできることを期待したい。

関連記事