「元カレが好きだったバターチキンカレー」考案者・川代紗生に聞く、復讐心を埋葬する方法

なぜ私はめんどくさい女なのか

――川代さんの作品には、食べ物に対する愛情やこだわりも感じられます。もともと食を描きたいという気持ちはありましたか?

川代:書いているうちにすごく好きなことに気づきました。そんなに自覚はなかったのですが、いざ書き始めてみると確かに私はいつもご飯のことばかり考えているんです。一日の悩み事が、「今日の夜何を食べよう」などと食べることばかり。自分の過去を思い出すときに、記憶が食べ物とひも付いていることが多いという気づきもありました。例えば、おばあちゃんが作ってくれた酸っぱい梅干しの味を思い出すと、当時の光景が一気に浮かんでくるんです。食べ物は、その時代に戻れるタイムマシンのような役割をしてくれると思いますね。

――失恋の描写もリアルだと感じました。女性の描き方の部分では、結構グサグサと本質をついていますよね。めんどくさい女になりたくないという自意識などもしっかり書かれていましたが、その辺りは、あえて容赦しなかったんですか。

川代:「〇〇のフリをやめる」ということが今回の本のテーマにありました。そこで、どうしたらめんどくさい女をやめられるのか、なぜ私はめんどくさい女なのか、という問題を深掘りしていくと、本質的なところにたどり着いてしまうんですよ。例えば第3話の『「着払いで送ってポテサラ」――めんどくさい女じゃないふり』の牧子さんは、36歳にもなると何をするにも「結婚しないのか」というプレッシャーを感じてしまいます。自分はふつうに恋愛したいだけでも、年齢のせいで「重い」「責任を取りきれない」「めんどくさい」と相手に感じさせてしまうのではないか——。明るくふるまいながらも、そんな不安とつねに闘っています。「私は、ただでさえめんどくさい女と思われやすいのに、これ以上めんどくさいことをしてはいけない」というプレッシャーを無意識に感じている。それを拭い去っていくことこそが、この埋葬委員会でやりたかったことなんです。「あなたのモヤモヤしているところって、ここですよね」という部分を深く掘り下げていきました。

――改めてこれから“埋葬したい”想いのある読者の方に、メッセージをお願いします。

川代:「食べる」ということは日常的な行為ですから、そこでふと思い出してモヤモヤした気持ちが生まれてしまうこともあると思います。でも、そこで見ないふりをすることは、痛みを感じることを先延ばしにしているだけで、結局はどこかでケリをつけないと次には進めません。『元カレごはん埋葬委員会』は、じくじく痛み続けているものにきちんと向き合い、傷つくなら傷つききって、ここで終わりにしましょうとケリをつける話です。傷つくこと自体は悪いことではないし、ネガティブな感情としっかり向き合うことも、時には必要。ただそれに一人で向き合うのは勇気がいりますよね。そんなときに、喫茶「雨宿り」に寄ってもらうような気持ちで、しんどい時間を一緒に過ごせたらいいなとこの本を書きました。皆さんのモヤモヤを埋葬する手助けができればと思います。

■書籍情報
『元カレごはん埋葬委員会』
著者:川代紗生
価格:1760円
発売日:2023年12月7日
出版社:サンマーク出版

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