FORWARD・ISHIYA × WARHEAD・JUN対談 ハードコアパンクの海外ツアーの醍醐味
海外ツアーの醍醐味
JUN:俺は今度、ドイツ、デンマーク、スペインで5連チャンのツアーをやるんやけど、アメリカとかオーストラリアのハードなツアーを経験しているから、そんぐらいやったるわって気持ちになる。やっぱり、アメリカから帰ってきてキツい時期もあったけれど、あの過酷なツアーを乗り切ったんやから、どこでもなんでもできるっていう気にはなった。
ISHIYA:アメリカとかオーストラリアのツアーをやってたら、世界中どこでもやれるよ。
JUN:ヤケクソにならずに、ちゃんと回れたしな。
ISHIYA:ヤケクソになってもどうにもならないからね、海外は。
JUN:そう、みんなで協力もせなあかんしな。物販運んで、次の街行って、着いたら着いたで隅っこでギターの弦張り替えたり、髪の毛剃ったり。やらなあかんことをやっているうちに、ツアーが日常化していく。あれがおもろいな。
ISHIYA:大体同じタイミングで頭剃ってたもんな、俺たち。ツアーを一緒に回っているとだんだんそうなっていく。各自がバラバラにやるべきことをやっているんだけれど、ライブという目的に沿って動くから、気持ちは合わさっていくような感覚がある。それも醍醐味だね。
JUN:毎日ライブがあるからな。他のバンドのライブを見て「なにくそ!」って元気が出ることもあるし、自分たちのライブもあるし、それをどんどん積み重ねていく感じ。
ISHIYA:めちゃくちゃ疲れるけどね。でもやっぱり、アメリカが一番疲れるな。ヨーロッパとかも疲れるけれど、期間は1週間とか、せいぜい10日じゃない。でもアメリカは1ヶ月くらい回るわけで、毎日のようにパーティーもあるから、日本のツアーとはわけが違う。
JUN:俺らはもう疲れ過ぎて、最終日に飛行機に乗り遅れて、サンフランシスコで一泊して、最後にビジネスクラスで帰るっていう始末やったから(笑)。
ISHIYA:日本なら言葉も通じるし、食い物もなんとなるし、迷子になっても大丈夫じゃない? 公園にだって泊まれるし、駅さえ探せば次の会場にも向かえる。
JUN:まあ、そういうことをすると他のメンバーに迷惑かけるけどな(笑)。日本で一緒にツアー回ってたとき、なぜかISHIYA君と全然知らない人の家の駐車場で飲んでたことがあった。
ISHIYA:そういえばあったな、そんなことも(笑)。
JUN:でもアメリカツアーの時のISHIYA君はしっかりしてた。たぶん、俺らを連れてったからちゃんとせなあかんって思ってたんやろね。それがだんだんと飲み方がおかしくなっていったのは、この本にも書かれている通りなんやけど、自分でもわかってるんやなって思った(笑)。よくちゃんと覚えてるな。
ISHIYA:飲み方がおかしくなったのは、あとから気づいただけでその時はわかってないよ(笑)。記憶に関しては、ツアーの度にいろんなところでレポートを書いてきたから、それを改めて読んだり、当時の写真を見たりすると思い出すんだよね。酔っ払うと写真を撮るのすら忘れたりするんだけど。
想いを素直に伝えるだけで案外通じる
ISHIYA:英語が通じる街はともかく、チェコとかに行くと街の名前すら読めないんだよね。英語も通じないし。それでも身振り手振りでなんとかなったりするのは面白い。コミュニケーションが不安で海外ツアーを躊躇する人もいると思うけれど、気持ちがあれば全く関係ないということは言っておきたいな。もちろん、ビジネス的な交渉をしたりするのに言葉は必要だけれど、あとは自分の想いを素直に伝えるだけで案外通じる。
JUN:初めてチェコに行った時、その前がロンドンで、チェコに入国するときに酒を持ち込めんから、持っていたブリストルのサイダーあるやん? あの樽のやつ。あれの残ってたのを一気飲みして。そしたら記憶が飛んで、気ぃついたら全く知らん人の家で寝てた(笑)。俺はそうやってチェコに入ったくらいやから、まあなんとかなる。
ISHIYA:ヨーロッパは親切な人が多いね。入国審査とかも厳しくないし。とにかく迷子にさえならなければ大丈夫!
JUN:家族は毎回、俺が生きて帰ってくるかわからんくらいの気持ちでいるみたいやけど、いつもちゃんと帰ってきてるからな。なんのアドバイスにもならんけど(笑)。
ISHIYA:JUNは海外に行って、変わったことはある?
JUN:WARHEADとして海外に行ったからといって、日本での扱いが変わるなんてことはなかったけど、俺自身は鉄アレイがイギリスに行ったのとか、FORWARDがアメリカに行ったのとかを聞いて、めちゃくちゃ感動したし刺激を受けた。日本のハードコアシーンがもっと面白くなるんじゃないかと思って、ISHIYA君と一緒にアメリカに行く前には興奮して家まで行ったしな(笑)。意識が高いとか低いとかじゃなくて、自分自身で何かをやってみたいって思うことが増えた。
ISHIYA:2000年くらいに鉄アレイがブリストルに行ったじゃない? 俺もFORWARDで行きたいってGABBAに言ってたんだけど、「最初は鉄アレイを呼びたい」って言われて、めちゃくちゃ悔しかったよ。仲間が海外に行くと、俺も絶対に行こうって思うよな。
JUN:いまだにRYO(鉄アレイ Vo.)がブリストルで買ってきてくれたTシャツ持ってるもん。
ISHIYA:あれで海外ツアーがすごくリアルなものとして感じられるようになった。ブリストルに行ったのはWARHEADの方が先だよね。
JUN:そう。ブリストルではCHAOS U.Kと一緒にやったけど、次の街に行ったら地元の若い子がやっているカバーバンドやったから(笑)。その子はDischargeのTシャツ着ていて、俺が着ているTシャツと変えてくれって言われたんやけど、汗でベタベタやったから嫌やって断った(笑)。ホント、地べたのイギリスやったね。
ISHIYA:CHAOS U.Kが初めて来日したのが1985年くらいで、その時にLIP CREAMとかEXECUTEとかGAUZEの人たちがコミュニケーションを取り始めて、その繋がりで俺たちも仲良くなっていったんだよね。
JUN:うん、やっぱりCHAOS U.KのGABBAやね、最初は。GABBAの日本の彼女がうちの近くに住んでいて、それで近所の連れみたいになっていった。その縁で今も海外に行けてるのは、自分でもびっくりするわ。最初にも言ったけれど、コロナ禍で気持ちにビビりが入って、「ほんまに行けるんかな」って思ったりもしたけれど、この本を読んですごく元気が出た。お金やったり生活やったり、いろいろ絡んでくるけれど、自分がやりたいことはやったろうって改めて思った。ISHIYA君、俺たちの経験を本にしてくれてありがとう。
■書籍情報
『Laugh Til You Die 笑って死ねたら最高さ!』
著者:ISHIYA(FORWARD/DEATH SIDE)
ISBN:C0073 978-4909852-44-1
発売日:2023年8月4日(金)
価格:3,000円(税抜)
判型:A5変形
頁数:472頁
発売元:株式会社blueprint
blueprint book store:https://blueprintbookstore.com