『葬送のフリーレン』を読み解くキーワード 登場人物たちが口にする「くだらない」の意味とは?

 勇者一行のひとりとして魔王討伐を成し遂げた魔法使いが、思い出を回想しながら再び旅路を辿る『葬送のフリーレン』。魔王や魔物の討伐といった壮大な物語が進行するなか、作中では登場人物が「くだらない」とこぼすようなエピソードが非常に多く描かれている。本作でくだらないことが多く描かれるのはなぜか、考察したい。

周りからすれば「くだらない」

 主人公の魔法使い・フリーレンの新たな仲間となるフェルンとシュタルク。ふたりは揃って「くだらない」とこぼしている。

 第3話「蒼月草」にて、なぜ魔法を集めるのかと尋ねるフェルンに対しフリーレンは「本当にただの趣味だよ。(中略)私の集めた魔法を褒めてくれた馬鹿がいた。それだけだよ」と答える。フリーレンが多くの人を救える魔法使いだと思うフェルンは「くだらない理由ですね」と返した。

 第11話「村の英雄」では村人が恐れる紅鏡竜を討伐したフリーレンたち。報酬に夢中となるフリーレンと「全部は持っていけませんよ。/3つまでにしなさい」と母親のように忠告するフェルンを目にしたシュタルクは「本当にくだらねぇな」とこぼした。

 ちなみに第10話「紅鏡竜」にてシュタルクもフリーレンに魔法(魔導書)を集める理由を尋ね、彼女の返答に「くだらねぇな」と言葉を返している。シュタルクは紅鏡竜が襲う村の住人であり、村人が恐れる紅鏡竜と命をかけて戦う理由が「ただの趣味」であることに彼は「くだらない」と思ったのだ。

 また魔王討伐を成し遂げた勇者一行のひとり・アイゼンも、魔王を討伐するための道中に「かき氷を出す魔法」ではしゃぐフリーレンを見ながら「くだらん」と発している。

 フェルンやシュタルク、アイゼンの姿から、彼らの「くだらない」とは魔物・魔王の被害で困っている人たちにとって価値のない、または魔王討伐といった旅の目的に沿わないことを指すのだと考えられる。

 たしかに周りからすれば魔法を集める趣味に意味や価値を見出すことはむずかしく、傍から見ればくだらない。ただ旅をする本人にとって、くだらないことには意味や価値がないのだろうか。

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