『ONE PIECE』なぜ少年漫画では珍しく”悪役”が主役なのか……作者・尾田栄一郎が描く”異色”の真意

 誰もが知るように、『ONE PIECE』は“海賊”を主人公とする物語だ。一般的には海賊は正義の味方ではなく悪役とされることが多いため、少年漫画としては異色の設定と言えるだろう。

 なぜそんな設定が選ばれたのか、作者・尾田栄一郎のやりたかったことを考えてみよう。

 まず、尾田のデビュー初期作品をまとめた『WANTED! 尾田栄一郎短編集』を振り返ってみると、そこには悪人およびアウトローの姿がひしめいていることが分かる。

 たとえば、高校生時代に描き上げられたという短編『WANTED!』。同作の主人公はギル・バスターというお尋ね者のガンマンで、この頃からすでに典型的な正義のヒーローから距離をとっていた。

 また、商業誌に初掲載された短編『神から未来のプレゼント』は、盗人家業がやめられない天才的なスリの男が、とある百貨店の危機を救う話だ。いずれも人々に賞賛されない社会のはみ出し者が、個人的な信条や自由な生き方によって輝くところを描いているのが印象に残る。

 さらに読み切りの『MONSTERS』は、一流剣士として知られる人物が裏では極悪人だったことが発覚する一方、放浪の侍・リューマが伝説を築くという物語だった。ヒーローとアウトローを逆転させる扱いは、尾田の作風を象徴するものだろう。

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