税込6万6000円の美術書『名刀甲冑武具大鑑』登場 紙の書籍の”生きる道”は、高価格帯・豪華版のニッチな内容?

 NHK出版がなんと、定価66,000円(税込)という高額な美術書『名刀甲冑武具大鑑』を7月5日に発売する。2023 年 12 月末日まで期間限定特価として59,400 円で購入可能で、初版限定特典として、国宝「金地螺鈿毛抜形太刀」のカラー原寸大ポスターがつく。

  同書は、天下の名刀、鎧や兜の名品、さらには多彩な武具の精華となる逸品400余点を収録。優れた日本美術としても評価が高い、侍が生んだ芸術を俯瞰できる内容とのことだ。近年、日本刀の豪華本があいついで出版されており、小学館が2020年に発売した『名刀大全』は38,500円という価格ながら注文が殺到した。

 『名刀甲冑武具大鑑』は66,000円ということで、『名刀大全』を遥かに上回る高価な本だ。それでも出版に踏み切るということは需要を見込んでのことだし、NHK出版の自信の表われといえる。

 以前にリアルサウンドブックで取材した、小学館の「サライ」編集長の三浦一夫が企画編集にかかわった『日本鉄道大地図館』も39,600円と、やはり4万円近い値段でありながら注文が相次ぎ、しっかり黒字を確保している。中には複数冊買い求めた熱心なファンもいたという。

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  こうした事例からわかることは、ハードカバーの高い本であっても、内容がしっかりしたものであれば売れるということなのだ。それがニッチな分野であっても、編集者の熱意が籠った本は読者の共感を得るのである。現に、『日本鉄道大地図館』などは鉄道趣味の中でもさらにニッチな地図の本だった。この手の本を求める人は、金額以上に内容を重視する傾向が強い。

  今後、紙の本と電子書籍の棲み分けは確実に進むと思われる。例えば、流行の小説や漫画、雑誌などは電子書籍と親和性が高いため、市場は拡大するだろう。読者も通勤時間などに気軽に読める電子書籍を選ぶはずだ。

  一方で、マニアックな内容だったり、ビジュアル的に写真や絵を見せる分野では、紙の需要は残ると考えられる。紙の本はいわゆる嗜好品のような扱いになり、手触りや印刷の美しさ、装丁の作り込み、はたまた本棚に並べたときの見栄えの良さなどにこだわるものが増えるのではいだろうか。そうした豪華本の集大成といえる『名刀甲冑武具大鑑』がどれほどの支持を得られるか、注目したい。

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