「クリエイターとAIの未来を考える会」理事、無断の二次創作が発覚し炎上「作品が好きでファンとして行っていた」

二次創作は限りなく黒に近いグレー

 二次創作は極めてセンシティブな問題である。同人誌で食べていけるほどの利益を出している作家はごく一部であり、目くじらを立てなくてもいいのではないかとする意見もある。とはいえ、同人でマンションを買ったという作家もいるし、それほど稼いでも作者や出版社に版権使用料は支払わず、利益をそっくりそのまま懐に入れているのも事実だ。こうした行為をファン活動の一環と見なしていいのか、そもそもファンでもないのに流行りに便乗して稼ぐ同人作家を許していいのか―― といった議論も以前から存在するのである。

 法整備がなされていないAIに対し、二次創作は作者と出版社が黙認しているだけで、実際は限りなく黒に近いグレーである。では、なぜ出版社は黙認しているのか。それは作品の盛り上がりを象徴するファン活動と解釈しているためだ。

 さらに、近年は同人誌即売会が新人漫画家の発掘の場にもなっていることから、Win-Winの関係にあるためである。現に、近年は二次創作の同人誌から多くの著名な漫画家が輩出されている。こうした経緯があるため、自身も同人作家として楽しんだ経験をもつ赤松健は二次創作に寛容である。無名時代に同人誌制作で成長させてもらえたとして、プロになった後にも二次創作を許容する漫画家も少なくない。

 一方で、2006年に『ドラえもん』の公式には認められていない「最終回」と称した物語を描いた同人作家が、小学館と藤子・F・不二雄プロから著作権侵害を警告された例もある。この件では同人作家が数百万円の売上金の一部を藤子プロに支払い、在庫の廃棄などを行って解決した。このことからも、同人誌の問題は依然としてグレーであり、内容次第では警告を受けたり訴訟に発展する可能性もあることがわかる。そのため、AIの規制に踏み込むと二次創作の規制に繋がるのではないかという指摘もあり、今回の木目の対応を悪手と考えるツイートも見られた。

 なお、二次創作に否定的な漫画家が一定数いるのも事実である。自身が作り出したキャラクターの設定を改変され、成人向けの漫画を描かれることに嫌悪感を抱くある漫画家は記者の取材に対し、「ファンがツイッターに絵を上げるのはわかる。しかし、キャラクターが卑猥な行為をする同人誌を制作し、挙句の果てに同人誌ショップに流通させるのはファン活動の域を超えている」「私はキャラクターが汚されるのは耐えられない。著作者人格権を侵害している」と話した。「二次創作を見たくないのでネットを開きたくない」と語るほど苦悩していると言うが、声はあげにくいという。ネットでは二次創作を容認する動きが強く、同人誌即売会も大きな規模になっているためだ。一種の同調圧力ともいえる。

 二次創作を行う上ではこうした作家がいることも念頭に置き、ガイドラインを遵守し、羽目を外さない程度にほどほどに楽しむことが求められるだろう。

 AIはどうあるべきか。そして、二次創作はどうあるべきか。今後、漫画界、イラストレーションの世界で活発な議論がなされるべきテーマといえる。だからこそ、木目のわきの甘さが残念で仕方なかった。AIの普及は加速度的に進んでおり、多くのイラストレーターにとって無視できない問題であることは間違いない。健全かつ建設な議論がなされることを期待したい。

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