『明日カノ』『TSUYOSHI』などヒット作続々「サイコミ」の強みとは? 編集長・葛西歩×開発ディレクター・高超インタビュー

 現在ドラマが絶賛放送中の『明日、私は誰かのカノジョ』。そしてSNSのみならずネットを揺るがせた格闘漫画『TSUYOSHI 誰も勝てない、アイツには』など、女性向け・男性向けともに多くのヒット作を生み出してきた「サイコミ」。

 漫画をもっと気軽に読んで欲しい、読者のライフスタイルにあわせてアプリとWebという選択肢を提案したい……そんな思いの元、今年の1月にWeb版「サイコミ」を大幅にリニューアルし、リリースさせた。Webブラウザからでも、アプリと変わらず無料話から最新話まで連載漫画をすべて読めるようになったのはもちろん、Webならではの新機能もある。

 今回は、「サイコミ」で編集長を務める葛西歩氏と、Web版リニューアルで開発ディレクターを担当した高超氏にインタビューを敢行。リニューアルプロジェクトの裏側、そしてCygamesならではの強み、今後の編集方針も含め「サイコミ」の現在地とこれからについて話を伺った。(ちゃんめい)

ユーザーも作家も待ち望んだ、Web版リニューアル

左、葛西歩氏。右、高超氏。

――Web版リニューアルは、かねてよりユーザーからも要望があったのでしょうか?

葛西:ありましたね。やっぱりアプリをインストールすることがハードルになっているユーザーさんは一定数いらっしゃいますし。あと、連載作家さんからも読者を誘導しやすいようにWeb版を改善して欲しいというお声をいただいていました。

――「サイコミ」が創刊された2016年からWeb版は存在していましたよね。今までWeb版はどんな立ち位置だったのでしょうか。

葛西:これまでのWeb版は、「無料公開話のみの閲覧が可能」などアプリ版とは異なる仕様でした。というのも、立ち上げ当初はアプリに集中するという方針を取っていたので、Web版は機能を絞って運用していたんです。お陰様でアプリが順調に成長し、ユーザーさんも増えてきたので、ようやくWeb版にしっかりと着手できるタイミングになりました。ユーザーさんと作家さんのご要望、そして我々としてもアプリだけにこだわるつもりはなかったので、読者のライフスタイルにあわせてアプリとWebの選択肢をご提案できたらと思い、Web版のリニューアルに踏み切りました。

――リニューアルリリースされてから3ヶ月が経とうとしています。手応えはいかがですか?(*取材時は4月下旬)

高:ありがたいことに右肩上がりです。まだまだ成長途中ではありますが、これから更なる流入数の増加に期待しています。

――Web版とアプリ版でユーザー属性や読まれている作品など、何か違いは見受けられますか?

葛西:そこまで大きな違いはありませんが、強いていえばWeb版の方が新しい読者さんが多いことでしょうか。例えば、Twitter経由で作品を知ってくださったり、ドラマやアニメきっかけで『明日、私は誰かのカノジョ』や『ウマ娘 プリティーダービー うまむすめし』に興味を持ったり……そこから作品に辿り着くまでWeb版の方がアプリ版よりも圧倒的に手間が少ない。特に『明日、私は誰かのカノジョ』は、TVドラマが絶賛放送中なので今後が楽しみですね。

高:ユーザーの定義に関しては、Web版とアプリ版で異なる部分があるのかなと。アプリ版ではアカウントが作成されたら、それを1ユーザーとしてカウントしていた。けれど、Web版ならアカウントを作成せずとも直接コンテンツにアクセスできるんです。つまり、シンプルに“サイコミのコンテンツを知っている人”という、より広義な意味合いでのユーザーが今回のリニューアルによってさらに増えていくと思います。

最高のコンテンツを載せる“最高のビューアー”を作る


――リニューアルしたWeb版を拝見して、長編作品のバナーをタップするとすぐに該当章の始まりからスタートできる「章わけ表示」、そしてドラマ化作品の予告編が閲覧できる「YouTube動画の埋め込み」は新規ユーザーに親切な設計だと感じました。

高:Webはアプリと違ってどのページでもランディングページ(*1)として扱われる可能性があります。だから、「サイコミ」のどのページにアクセスされたとしても、そのページで作品の全てをユーザーに提示する必要があるんです。

*1・・・SNSや検索結果、広告などを経由してユーザーが最初にアクセスするページ

高:そう考えると、作品の特徴に合わせた「章わけ表示」や、ドラマ化されているほどの人気作品であるとアピールできる「YouTube動画の埋め込み」は絶対に必要な機能だと思ったんです。

――漫画のビューアーも他社のシステムなどを使わず、すべて自社で制作されていると伺いました。

高:ビューアー開発は今回のプロジェクトで一番時間を要しました。「サイコミ」の使命は“最高のコンテンツを作る”こと。だから、最高のコンテンツを載せる“最高のビューアー”を目指しました。具体的にはPCはもちろん、スマホ、タブレット、モニターなど、全デバイスで閲覧できること、そして見開き・回転対応など、この世に出ているビューアーの全機能を搭載させようと。初期の企画段階から一貫してこのイメージで開発を進めていきました。ビューアーは読書体験を左右する一番大切な部分なので、絶対にバグは許されない……とにかく最優先事項として対応していましたね。

――「Web限定作品」という新機能も気になるところです。まだコンテンツ自体はリリースされていませんが、どのような使い方を想定されているのでしょうか。

葛西:まだ検討段階ではありますが、「Web限定作品」だからといって“Webだけ”とではなく、Web版・アプリ版で違うコンテンツが楽しめる。そういった違いを楽しめる使い方をしていきたいです。また、他にも動画コンテンツや小説など漫画だけに捉われずにユーザーさんに楽しんでいただける新しい何かを投入できたらなと考えています。

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