『デスノート』を使って生き残ったキャラはいる? 短編集で描かれた“消しゴム”の存在

※本稿は『DEATH NOTE』のネタバレを含みます。

 2003年から『週刊少年ジャンプ』で連載され、コミックスの全世界累計発行部数は3000万部を突破している人気漫画『DEATH NOTE』(原作:大場つぐみ/作画:小畑健)。2023年4月に本作を原作とする映画作品がTV放送されるなど、今なお根強い人気を博している。

 そんな本作のキーアイテムとなるのが、ご存じの通り、名前を書かれると死んでしまうノート「デスノート」だ。その能力はあまりにも強力だが、作中でデスノートを使用した者には相応の結末が待っている。本稿ではデスノートを使用した登場人物について振り返ってみたい。

デスノートを使用した6人

 本編において最初にデスノートを手にした人間は、主人公・夜神月だ。世の中を悪のない理想の世界へと変えるために、月はデスノートに凶悪犯の名前を書きはじめる。

 二人目は、そんな月を崇拝しつつ、ティーン誌のモデルとして活動していた少女・弥海砂。彼女は姿を目にするだけでその人物の名前を知ることのできる「死神の目」を手に入れ、終盤まで月の戦力として活躍した。

 本作の序盤では、月と海砂のふたりが「キラ」として、世界一と称される探偵・Lとの心理戦を繰り広げることとなる。しかしその後、ふたりは意図的にデスノートの所有権を放棄し、巨大企業・ヨツバグループの幹部の1人である火口卿介が所持者に。ただ月の目的を達成すると、火口は月によってデスノートに名前を書かれ心臓麻痺となり、そのあとにLも死を迎える。

 作中でもターニングポイントとなったLの死を区切りとした際、デスノートを使用したのは月と海砂、火口の3人だ。Lの死以降の物語では月の協力者として登場する魅上照と高田清美、そしてLの後継者候補・メロに協力するマフィアのメンバーであるジャック・ネイロン(本名:カル・スナイダー)の3人が新たにデスノートを使用することとなる。

 そんな彼ら彼女らは、作中において死を迎えている。火口は前述したとおりだが、ジャック・ネルソンと高田は月によってデスノートに書かれ、魅上も獄中で発狂したのちに死亡したことが明かされている。月も本作のクライマックスでとある者によってデスノートに名前を書かれ、心臓麻痺で死を迎えた。

 上記5人は本編が完結するまでに死を迎えたことが描かれているが、作品の解説本として出版されたコミックス第13巻において(死因は不明であるものの)海砂も死亡したことが明かされた。よって作中においてデスノートを使用した者はそれぞれに死を迎えることとなった。

 コミックス3巻「page.22 不幸」において、死神・リュークは月に対し「普通は(ノートを使用し)死神に憑かれた人間は不幸になるらしい」と話しており、月は「じゃあリュークは普通じゃない方のパターンを見れるよ」と反論した。

 もちろん死を迎えたこと自体が一概に不幸と断定することはできないが、死神に憑かれた=デスノートの所有権を得て使用した人物みなが死を迎えている点から、作中においてリュークの話す定説は覆ることはなかったと言えるだろう。

異質な短編「鏡太郎編」

 一方で、違った結末を迎えた人物がいる。本作は2006年に連載を終了しているものの、2021年2月に『DEATH NOTE短編集』が出版された。本作には異なる人物がデスノートを手に入れ、それぞれの思惑でデスノートを“使用”する姿を描いた短編が収録されている。

 複数の短編では月がキラとして世の中に影響を与えたことが過去となった世界を舞台に、リュークやニア、松田など、なじみ深い人物が登場する。月とは異なる方法でデスノートを駆使しながら世の中に影響を与えるものの、彼らも月たちと同様に作中において死を迎えることとなる。

 しかし「鏡太郎編」においてはデスノートを使用した人物が死を迎えずに物語の幕が閉じる。

 「鏡太郎編」は他の短編とは少々異なり、ニアや松田といった本編の登場人物は描かれない(ただしリュークは除く)。また「DEATH ERASER」というアイテムが登場する点も他のエピソードと一線を画すものだ。

 DEATH ERASERはデスノートによって死を迎えた人物を生き返らせることができるアイテムであり、作中でデスノートを使用した人物はDEATH ERASERを用いて死者を蘇らせている。

 デスノートを使用した者は不幸になってしまうという定説が存在する本作において、「鏡太郎編」および「DEATH ERASER」は『DEATH NOTE』における救いと捉えることのできる存在だろう。本作の救いのなさが魅力だという人も少なくなさそうだが、違った視点からこの名作を捉え直したい人は、ぜひ短編集をチェックしてみよう。

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