映画が終わっても語り続けたい『SLAM DUNK』 リアルのバスケや「スラムダンク奨学金」に注目を
アニメーション映画『THE FIRST SLAM DUNK』の大ヒットが続いている。声出し&歓声ありの「応援上映」や、赤ちゃんと一緒に鑑賞できる上映会「おやこシネマ」(グランドシネマサンシャイン池袋)、Bリーガーのトークイベント付き上映など、工夫を凝らした企画も行われており、リピーターも増加している状況だ。韓国での記録的なヒットも、日々ニュースとして伝えられている。
「週刊少年ジャンプ」での『SLAM DUNK』の連載が終了したのが1996年。以降、期待された続編も正式なスピンオフもなく、作品世界の情報が更新された出来事は、2004年12月、作者の井上雄彦自身が廃校となった旧神奈川県立三崎高校の黒板に湘北高校メンバーの「あれから10日後」を描いたことくらいだった。そんななかで2022年12月に『THE FIRST SLAM DUNK』が公開され、多くの人々が『SLAM DUNK』について語り合う、ファンにとって願ってもない状況が生まれている。
ロングランが続いている映画の上映が終われば、また『SLAM DUNK』という作品について議論を交わすことはなくなってしまうのだろうかーー。そんな寂しい想像にストップをかけてくれるのが、世界最高峰の舞台・NBAから活躍のニュースを届けている、八村塁選手や渡邊雄太選手の存在だ。
桜木花道のようにリバウンドを取り、赤木剛憲のように強烈なダンクやブロックを見せ、三井寿のように3ポイントシュートを沈める日本のスターたちは、『SLAM DUNK』の“その先”を見せてくれているかのようだ。ネブラスカ大学で活躍する“和製ステフィン・カリー”富永啓生選手をはじめとして、NBAを視野に入れている期待の若手も多く、「『SLAM DUNK』の連載当時は想像もできなかった」なんて会話も楽しい。
そして、日本人選手たちのリアルな活躍と、『SLAM DUNK』という作品をダイレクトに繋げてくれる取り組みとして、「スラムダンク奨学金」がある。ご存知の方も多いかもしれないが、作者・井上雄彦氏が「読者とバスケットボールというスポーツに、何かの形で恩返しがしたい」と考えて立ち上げた制度で、高校卒業後、アメリカで競技を続ける意志と能力を持ちながら、経済的な理由等で夢を叶えられない選手たちを支援するものだ。第一回の2008年以降、プロ選手を数多く輩出している。
第14回(2021年)、第15回(2022年)の奨学生派遣は、コロナ禍の影響で断念されていたが、第16回の奨学生は、U-18世代のスター選手で、『Future Bound Classic 2023(FBC)』のダンクコンテストで優勝も果たした、伊久江ロイ英輝選手に決定。今年の9月から9ヶ月の予定で渡米し、 セントトーマスモアスクールで学業とバスケットボールの研鑽に励むという。高い身体能力に甘えず、アメリカでの活躍に向けて練習に励む伊久江選手が、憧れのスター選手=ヤニス・アデトクンボのような支配的なプレイヤーになり、いいニュースを届けてくれれば、その度に『SLAM DUNK』の素晴らしさを思い出させてくれるだろう。
続編が生まれる可能性が高いとは言い難くても、語り続けたい名作『SLAM DUNK』。映画の上映期間が終わっても、リアルのバスケットボールや「スラムダンク奨学金」の行方を追いかけながら、“物語の続き”を楽しんでいきたいところだ。