『ぼっち・ざ・ろっく!』担当編集・瀬古口拓也インタビュー 「4コマ雑誌「きらら」の固定観念を払拭する企画を出し続けてきた」

新人作家はどうスカウトする?

――「きらら」の創刊の頃は、美少女ゲーム出身の方が漫画を描く例が多かったですよね。

瀬古口:美少女ゲームの原画家やグラフィッカーだったという人は、2010年頃までは多かったですね。まさに、一大人材供給源だったと思います。

――デジタル化もかなり早かったと思います。

瀬古口:もともと当社は漫画家を一から育てるよりも、スカウトが多いんです。最近はTwitterで声をかけることもありますが、創刊の頃はコミケで同人誌を出していた方をスカウトしていたそうですが、やはり美少女ゲームに関わっておられた方はデジタルが得意だったんですよね。

――2010年代前半は、まだ少年漫画や少女漫画ではアナログの漫画家さんの比率が高かったと思います。

瀬古口:うちはほぼ全員と言っていいほどデジタル(笑)。今までアナログで描いていたのに、弊誌に持ち込む際にデジタルにしたという漫画家さんもいました。

――そして、年々「きらら」の漫画は、4コマとは思えないほど作画が緻密になっています。

瀬古口:先ほどお話したように、デジタル化が早かったのが大きな要因かなと。アナログと違って、画面で拡大しながら描けますからね。『ご注文はうさぎですか?
』は描き込みの凄さでも評価されていたのですが、僕も担当していた漫画家さんに、「もうちょっと目の描き込みを増やしましょうか」と言ったことがありました。「きらら」の漫画家さんはみなさん本当にきれいな絵を描かれます。

なぜ、少女漫画出身の漫画家が増えたのか?

――「きらら」の漫画家と言えば美少女ゲームのイメージがあったのですが、最近は『ぼっち・ざ・ろっく!』のはまじあき先生のように、少女漫画出身の漫画家が増えています。

瀬古口:はまじあき先生もそうですが、どういうわけか少女漫画家出身の方は持ち込みで来られる方が多いんですよ。そして、画力が高いので即戦力になる人が多いですね。

――「きらら」が選ばれるようになった要因はどこにあると考えていますか?

はんざわかおり『こみっくがーる』1巻(芳文社)

瀬古口:やはりアニメ化などのメディアミックスの事例が多いというのが大きな魅力でしょうね。

――最近の少女漫画は、アニメ化される例が非常に少ないですからね。「きらら」の歴代ヒット作を見ると、単行本はアニメショップや大手書店でも平積みされ、グッズもたくさん出ています。漫画家にとって魅力ある舞台であることは間違いありません。

瀬古口:少女漫画絵と萌え系の絵は源流が同じであるとは言われていますが、それでも大幅な絵柄の調整が必要になることが多いので漫画家さんは大変だと思います。しかし、それでも選択肢に上がるようになったのは興味深いですね。

「きらら」のアニメ化連発の理由と今後の展望

――作品のアニメ化は、瀬古口さんの方からこれだと思った作品を推すのでしょうか。

瀬古口:基本的には編集部から提案することはなく、アニメ会社や制作側から提案があるんですよ。

――そうなんですか! 選ばれるポイントはどこにあると考えていますか。

瀬古口:やっぱり、アニメになったあとに配信やグッズなどの展開をしやすそうというのが、選ばれる理由かなと。

――そうなると、主要なキャラクター4人が全員メインヒロインになってもいいように、キャラを作り込む必要がありそうです。

瀬古口:もちろん、どの作品もメディア展開は狙っています。とはいえ、漫画なので明確に主人公がいますので、全員が推しというレベルまでは考えていませんが、ヒロインが何人かいてそれぞれキャラが立つように作っています。

――「きらら」のこれからが楽しみですね。瀬古口さんは今後、どんな雑誌を作っていきたいと思っていますか。

瀬古口:これから先も、やっていることは今とそんなに変わらないと思っています(笑)。ただ、日本のちょっとでもオタク気質な層が、「きらら」作品に注目してくれる状態にはしたいですね。

――オタク向け、という信念はぶれませんね!

瀬古口:はい。オタクのみなさんがますます喜んでくれる雑誌にしたいですし、そのためにアニメ化を狙って漫画家さんと作品をつくっています。そうやって作った漫画が一般の方にも受け入れていただけたら、なお嬉しいと思っています。

関連記事