『チェンソーマン』キスシーンはなぜ刺激的? 読者を惹きつける“命懸けの恋心”

「『チェンソーマン』における恋愛は、どれもこれも“命懸け”です。第一部のデンジとマキマの恋もそうですし、アニメ化でさらに人気キャラクターとなった姫野も、命を賭してアキを守ろうとしました。『チェンソーマン』の登場人物たちはみんなエキセントリックで、過激な暴力表現や死のイメージに目が行きがちですが、実は誰もが“純愛”によって突き動かされている。命懸けの恋、死ぬほど/殺したいほどの愛は、作品を通して繰り返し描かれてきたテーマであり、緊張感のある状況で展開されるからこそ、強く印象に残るのだと思います」

 最新話のキスシーンは『ナユタの前でイチャイチャしたら死ぬ』という強烈な縛りがあるからこそ、さらに興奮させられるのだろう。性と死を同時に描くことも、藤本タツキの作風だ。

「藤本タツキの漫画は『ファイアパンチ』から一貫して、近親相姦やカニバリズムなどのタブーが織り込まれてきました。『チェンソーマン』ではデンジとパワーの関係が近親相姦的ですし、マキマはデンジに食べられてしまいます。相手を食べてしまいたいほど愛しているという、エロス(生きる情動)とタナトス(死の衝動)が強調された過剰な表現が多くの読者を獲得しているのは、人間の心の奥底にはそのような願望が秘められているということの証なのかもしれません」

 デンジとアサのラブコメムードから一転、またしても危機的な状況へと陥った『チェンソーマン』。二人が抱きつつあった淡い、しかし命懸けの恋心は成就するのか。予測不能な展開から目が離せそうにない。

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