【ライトノベル最新動向】電撃小説大賞受賞作が続々刊行 2月の注目作を一挙紹介

 2月はライトノベル好きにとって注目の月。前年の電撃小説大賞で受賞した作品が発売になるからで、古くは『ブギーポップは笑わない』(電撃文庫)の上遠野公平を送り出し、最近でも『86-エイティシックス-』(電撃文庫)の安里アサト、映画が日本だけでなく韓国でも大ヒット中の『今夜、世界からこの恋が消えても』(メディアワークス文庫)を書いた一条岬らが電撃小説大賞から登場。人気作家の登竜門として関心が高い。

 未来の上遠野公平や安里アサト、『キネマ探偵カレイドミステリー』(メディアワークス文庫)でメディアワークス文庫賞を受賞しデビューした斜線堂有紀を目指した応募者で、応募総数がとてつもない本数になるのも電撃小説大賞の特徴だ。第29回電撃小説大賞の応募総数は何と4128作品。その頂点となる《大賞》を受賞した作品が、2月10日発売の榛名丼『レプリカだって、恋をする。』(電撃文庫)だ。

 具合が悪い日や定期テストがある日になると呼びだされる、愛川素直という少女の分身体が、本体に黙って恋をしてしまうというストーリー。どうしてそうなるのかといった理由は色々と想像できるが、雰囲気としては思春期ならではの迷いや不安に悩む自分に、挑戦する気持ちをもたらしてくれる一冊となっていそうだ。

 《金賞》となった彩月レイ『勇者症候群』(電撃文庫)も登場。夢の中で女神なる存在に勇者だと称えられた少年少女は、人間を魔物と思い込んで殺戮を始める。そんな勇者と戦う少年と、勇者を人間に戻そうとする少女が組むことで何が起こるのか。劇団イヌカレー(泥犬)がデザインを手掛けるクリーチャーのビジュアルともども楽しみな新作だ。

 五月雨きょうすけ『クセつよ異種族で行列ができる結婚相談所 ~看板ネコ娘はカワイイだけじゃ務まらない~』(電撃文庫)は《銀賞》受賞作。異種族間の戦争が終わり、17の種族が平等に暮らすようになった実験都市にある結婚相談所が舞台。見習い相談員のアーニャが訳あり相談者たちの相手に奔走するストーリーから、お互いを理解する大切さを感じ取りたい。

 こちらは2600作品の応募から選ばれたという第3回集英社WEB小説大賞《大賞》の緑豆空『銃弾魔王子の異世界攻略―魔王軍なのに現代兵器を召喚して圧倒的に戦ってもいいですか―』(ダッシュエックス文庫)。ミリタリーオタクだった高山淳弥が参加したサバゲー大会で撃たれて死亡したはずが、異世界に転生して貴族の嫡男として育てられ、前世で見聞きしていた銃火器を召喚し、ミリタリーの知識を生かして領地の危機に立ち向かう。ミリタリー好きなら大いに楽しめそう。2月24日発売。

 第23回電撃小説大賞で《大賞》だった「86-エイティシックス-」シリーズは、最新刊『86-エイティシックス-Ep.12 -ホーリィ・ブルー・ブレット-』(電撃文庫)が登場。人類によって作られた兵器でありながら、人類を襲うようになった〈レギオン〉を相手にした戦いが厳しさを強いられる中、人類の間に不和が起こり起死回生を狙った禁断の手段が講じられようとする。

 人気シリーズでは、2月15日に大森藤ノ『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか外伝 ソード・オラトリア13』(GA文庫)が刊行。本伝とも言える『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか18』で大活躍した主人公のベル・クラネルが憧れ、追い求める少女剣士のアイズ・ヴァレンシュタインを描いたシリーズで、急成長するベルにも増して謎の多いアイズに今回はどこまで迫れるか。刊行が待ち遠しい。

 「このライトノベルがすごい!2023」で第1位の栄冠に輝いた衣笠彰梧のシリーズ最新刊で、2月25日発売の『ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編9』(MF文庫J)は修学旅行後に起こる登場人物たちの変化が描かれる。学園を舞台に少年少女が争うという意味では、猿ヶ原『ウォーゲーム・ハイスクール』(MF文庫J)も気になる一冊。14歳で富も名誉も手にしながら記憶を失った少年が、「最強」だった過去の自分に挑むという。

 新作では、2月1日発売の五月蒼『死にたがりのシャノン ドラゴンに食べられてみた』(スニーカー文庫)が、不老不死となった美少女魔法使いの死を求めての旅というストーリーで面白そう。2月15日発売の荒瀬ヤヒロ『廃公園のホームレス聖女 最強聖女の快適公園生活』(GAノベルズ)の方も、パワハラで神殿を飛び出した聖女が公園でホームレス生活をするという内容。傍目には過酷な境遇にある美少女たちの生き様に触れられそうだ。

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