棚橋弘至「悩みは大きいほど成長できる」 女性たちからの人生相談で得た気付き
トップクラスの選手が集う「新日本プロレス」において、絶対的なエースの座に君臨しつづけている棚橋弘至。様々な逆境を乗り越え、プロレス人気をV字回復させた“100年に一人の逸材”が、新たに挑んだのは現代を生き抜く女性たちからの「人生相談」!
働く女性のリアルな幸せを考える情報サイト「OTEKOMACHI」の人気連載が『その悩み、大胸筋で受けとめる 棚橋弘至の人生相談』として書籍化された。恋愛、仕事、生き方、将来への不安……。リアルでセンシティブな女性たちの悩みに、プロレスラー独特の「共感力」で立ち向かう。
棚橋弘至が辿り着いた、悩みに対する「受け身」の取り方と、愛があふれる「背中の押し方」について熱く語ってもらった。
まず相談内容を“受けとめる”
ーー棚橋さんはプロレス界を代表する存在であり、さまざまな逆境を覆してきた“エース”ですけども、いままで誰かから相談されるようなことはあまりなかったとか。
棚橋:僕自身があまり悩まないタイプですし、誰にも悩んでいる姿を見せたことがない。棚橋弘至の“逸材三原則”というのがありまして、「疲れない」「落ち込まない」「諦めない」の3つなんですけど、これに「悩まない」を足してもいいかもしれないですね。そんな僕の姿を見て、後輩たちも『タナハシに聞いても解決しないだろう』というイメージあるのか、誰も相談してきませんでした(笑)。
ーー悩んだことのない“逸材”が、悩み相談を受ける連載を始めたというのが大胆ですね。
棚橋:そもそも相談先を間違えているんですよ(笑)。トレーニングとか、筋肉のことだったら答えられるんですけど、プロレスラーが人生の諸問題の相談を受けるというのは今まであまりなかったと思うんです。僕は前例が無いということにやりがいを感じますから、ぜひやらせてくださいとお願いしました。
ーー「OTEKOMACHI」で連載していることもあり、女性からの相談がメインになっています。
棚橋:最初は異種格闘技戦のような心境でしたね。自分が想像もしなかったようなお悩みがたくさん届いて、いまを生きる女性を取り巻く環境や、対人関係について改めて知ることができました。
ーー「結婚式を挙げることに彼が抵抗。納得できない」「女性の容姿をランク付けする同僚に辟易」「コロナ禍で失職、風俗店で働くことに……」など、リアルで切実なお悩みが続きます。
棚橋:これまでの自分の中に無かった問題ばかりだったので、すぐには答えがみつからなかったですね。なので、ひとまずその相談を心に秘めて、普段の生活や、巡業で全国を回って試合をしながら、悩みに共感して相談者さんと同じダメージを受け続けました。……それをギリギリまで引っ張って、最後の締め切り日のカウント2.9になって、ようやく回答を書くという感じでしたね。
ーー悩みや問題に対して、まさに格闘していたんですね。
棚橋:まずわかったことが、「相談」というのは、する側と受ける側の熱量を揃えないといけないということですね。僕が相談者さんに寄り添って、自分だったらどうするかをまず考える。僕は40代男性ですけど、20代や30代の女子の気持ちになってみるんです。その状態で相談文を何度も読み返していると、ちょっとした言い回しや言葉の選び方に相談者自身がこうなりたいという願望や、解決のためのヒントがにじみ出ていて、なんとなくゴールが見えてくる。
ゴールさえわかれば、どういう道順を通ってもたどり着けますから、あとはどう導いていくかだけなんです。その上で大事なのは「決めつけない」こと。答えを出すというよりは、悩みをそのものを受けとめて、ゴールの方向に少し背中を押してあげるイメージですね。
ーー相手の悩みを受けとめることに集中する。
棚橋:そうなんです。そこがプロレスと似ていたんですよね。相談内容にもよりけりなんですけど、 まずは1回受けとめる。回避することもできるんですけども、それだと先に進まない。だったら1回受けてみることで、どれだけダメージがあるかが図れる。すると、どういう受け方をすれば最小限のダメージで切り抜けられるかという、次の1手が見えてくるんですね。
相談者さんというのは、その1手が見えてないだけなんです。だから僕は、どの相談でも「こうしなさい」という明確な答えは1個も出してないです。ゴール前までの道筋を立てて、背中を押すだけ。
ーーさすが試合巧者! 相談術を会得していますね。
棚橋:これは特に女性からの悩み相談に対しては有効なスタイルだと思います。まず相談内容を受けとめて、その解決策を提案しながら、最後はそっと背中を押す。男性のみなさんは、こうやって女性の悩みを聞いてあげるとモテますよ、というHow-To本にもなっています(笑)。
ーー男性は女性から相談されてもすぐ答えを出したり、あなたにも悪い所があるなどと詰めてしまいがちなんですよね。話を聞いて、共感することが大事といいます。
棚橋:ただ僕は自然と共感できてしまう、生まれ持ったモテ要素があるんですよ(笑)。あまり深く考えずに、一緒に悩みに立ち向かうタッグマッチだと思えばいいんですよ。女性が頑張っている姿をロープ越しに見届けて、よし、限界なら僕にタッチしてくれ、という感覚ですね。