AIの進化にショックを受けたイラストレーターが激白 「技術的に上手いだけの絵はAIに淘汰される」

AIはイラストレーターの仕事を奪うのか?

――AIはどこまで浸透するのでしょうか。例えばライトノベルの表紙をAIが描くことは、そうそう無いと私は思いますが。

「私は描くようになると思います。ここまで進化していったら十分に代替できると思いますよ。編集者やもしくは小説家が指示をして、絵を用意するんじゃないですか。AIの時代って、むしろ山内さんみたいなライターがセンスを生かして、絵を生み出せる気がします」

――確かに、AIに的確な指示を出すためには、言葉を使いこなせる人の方が有利かもしれません。

「ソシャゲの絵はAIが描くようになると思います。これは日本企業にとってはチャンスかもしれません。最近、中国企業のように資金力があって、人を集められる企業の方がソシャゲは強いでしょう。でも、イラストをAIが用意してくれるようになればコストカットにつながりますし、アイディア次第で面白いゲームが作れると思います」

――そんな時代に、イラストレーターに求められることは何だと思いますか。

「技術よりも個性が大事な時代になると思います。あとは、イラストレーターが絵にかける情熱ですよね。私は自分で言うのも情けないのですが、情熱がほかの作家と比べて圧倒的に足りないと思ってしまいました。だって、AIの絵を見てショックを受けて、自信をなくしてしまうくらいですからね。仕事がある限り続けていくつもりですが、一度抱いた気持ちをなかなか変えられない性格なので。淘汰されるのは時間の問題かもしれません」

AIと手描きは共存していくはずだ

 今回のイラストレーターの発言が、どこまでその通りになるのか。筆者にはわからない。AIの進化のスピードは速い。廃業するイラストレーターは確かに出てくるだろう。しかし、七瀬葵のように、AIを使いこなそうとするイラストレーターも増えていくはずだ。

  人間の創造力は凄まじいものがある。『初音ミク』が登場した時、まさかボーカロイドが歌う曲が世の中を席巻することになると予想していた人は、少ないのではないか。10年、20年先は、AIを巧みに調教できるイラストレーターの作品がブームを巻き起こしている可能性もあり得るのだ。

  では、昔ながらの手描きを追求してきたイラストレーターはどうなるのか。むしろ、チャンス到来かもしれない。大量生産できる工業製品が普及したとき、昔ながらの手仕事の価値が見直されることがあった。おそらく、手描きのイラストが見直され、価値は高まるだろう。AIには学習が難しい独特の絵柄や、ヘタウマ系の作家が脚光を浴びるかもしれない。

  AIを使いこなすクリエイターと、AIを使わずに手描きにこだわるクリエイターの両者が、共存していく形になると思う。私は手描きが好きだが、一方でAIを否定はしない。むしろ、いったいどんな新しい表現をしてくれるのか、楽しみにしているのだ。

AIソフトmimic(ミミック)はイラストレーターの仕事を奪うのか?

イラストレーターの画風や特徴をAIが学び、自動的に新しいイラストを作成するアプリ「mimic」ベータ版が話題になっている。15~…

【mimic(ミミック)】話題のAIイラスト作成アプリの改良版が登場 一体どう変わったのか?

 AIイラスト作成アプリとして社会的に様々な方面から話題となっている「mimic」が、ベータ版2.0としてバージョンアッ…

関連記事