2022年上半期の雑誌部数は10.3%減に その中でも14.8%増と躍進した『ハルメク』の凄さ

 日本ABC協会の2022年上半期(1~6月)の雑誌発行社レポートによると、掲載誌全体の雑誌部数は平均10.3%のマイナスとなった。雑誌全体の部数の落ち込みはこれまで話題となっているが、中でも二桁の落ち込みは、看過できない状況といえるのではないだろうか。

 その中で部数を伸ばしている雑誌がある。今回最多部数を更新した『ハルメク』だ。前年同期比で14.8%増となり、44万2093部となっている。まさに気炎をあげている状況といえそうだ。

 度々に編集長の山岡朝子がテレビや多くのメディアで注目されているので、ご存じの方も多いかもしれない。ハルメクは、定期購読を中心とした月刊誌で、書店の店頭では販売されていない。これまでになかった、50代以上の女性に向けた雑誌として出版されている。

 あらゆる雑誌が軒並み部数を減らしている中で、ハルメクの躍進は著しいものがある。参考までに、同じ月の『CanCam』の発行部数は約5.4万部であり、そのほかの女性誌も軒並み5~6万部前後にひしめき合っている。約23万部の『週刊文春』や、約13万部の『週刊ポスト』よりもハルメクは発行部数が多い。現在の雑誌業界で44万部が、いかに驚異的な数字といえるのかがわかるだろう。

 同誌を牽引するのが編集長の山岡朝子であり、今年の1月にNHKの「プロフェッショナル仕事の流儀」にも登場した。2017年に山岡は他社からヘッドハンティングされ、2年間で雑誌の売り上げをV字回復させた人物だという。

 ちなみに、山岡が編集長に就任したときのハルメクの発行部数は14.5万部であった。「プロフェッショナル仕事の流儀」で取り上げられたときの発行部数は38万部と紹介されていたから、それから6万部も発行部数を上積みしたことになっている。

 女性向けのファッション雑誌は、特に若者向けが軒並み低調である。一時はブランドのバッグなどの付録合戦が展開されたこともあり、まるで書店が雑貨店のような様相を呈していたこともあったが、現在もそれは下火になりつつある。あらゆる出版社が追従し、真新しさがなくなった印象はぬぐえない。

 ハルメクは付録ではなく、雑誌の中身で勝負する手法をとっている。同誌のWEBページを見ると、「読者の皆様のお声を徹底的に聞いて、記事に反映しています!」という文言が並ぶ。そして、読者が何に困り、何に興味を持っているかを知るために毎月インタビューを実施し、意見ハガキやアンケートも編集部で熟読して、リアルな声を元にかゆいところに手が届く特集・情報発信につなげている……とある。

 近年の雑誌を見ると、数少ない広告を逃さないために、ほとんどのページが事実上のタイアップ記事になっている例も少なくない。特にファッション雑誌はそうである。読者は広告を買わされているだけじゃないかと首をかしげる雑誌も少なくない。こうした雑誌作りが読者から飽きられてしまうのは、当然といえるのではないか。

 ハルメクはしっかりと編集部主導で情報を集め、検討し、誌面に反映するという、いわば雑誌の本来の作り方に忠実なのである。こうした原点回帰の姿勢が読者に届き、発行部数の押し上げにつながっているといえるだろう。

関連記事