【ラノベ週間ランキング分析】宝塚の舞台化で話題 同人誌発の歴史ロマンや「魔法科」シリーズ新作や「SAO」作者の新シリーズも

 ランキングの1位は、佐島勤よる「魔法科」シリーズで最新刊にあたる『続・魔法科高校の劣等生 メイジアンカンパニー5』(電撃文庫)。USNAの山中で見つかった「導師の石版」「コンパス」という2つの道具が、古代にあったと言われる高度魔法文明都市のシャンバラに続く道を示すものだという推測から、司波達也は調査に乗り出し中央アジアにシャンバラの移籍があったのではと考えるようになる。大東亜連合の「八仙」と呼ばれる凄腕の古式魔法師たちも“参戦”して来て、戦いも物語も世界規模へと広がっていく最新刊だ。

 3位の川原礫『デモンズ・クレスト1 現実∽侵食』(電撃文庫)は、「ソードアート・オンライン」シリーズや「アクセルワールド」シリーズの作者が新しくスタートさせた物語。やはりゲームが舞台設定の大きく関わってくるが、VRMMORPGの世界に没入して戦う「SAO」シリーズとは違い、本書は現実世界とゲーム世界とが重なったような複合現実(MR)がテクノロジーの中心になっている様子。

 小学6年生の芦原佑馬が妹の佐羽やクラスメートたちと一緒にVRMMORPG「アクチュアル・マジック」のテストプレイに参加しようとしたが、目覚めるとゲームに入り込むカプセル型の装置の中にいて、カプセルを開いて身を起こしても周囲に誰もいなかった。歩き始めると、クラスメートの綿巻すみかという少女がいたが、すみかは手に切断された人の腕を持って襲ってきた。そこに現れた妹は魔法らしきものを使ってみせた。

 やっぱりまだゲームの中にいるのか。それにしては動けば疲れるし傷を負えば痛みもある。その意味では現実にいるようでもある不思議な状態こそが、川原礫が新たに作りだした物語の舞台。「ソードアート・オンライン プログレッシブ」シリーズで改めて描かれている、ゲーム内での敗北が死に直結するデスゲームの恐怖と、MRという最先端のテクノロジーが合わさった新シリーズとなっている。

 1995年に単行本として出され、1996年に上下巻で電撃文庫入りして以来、ライトノベルの古典的な名作として親しまれてきた高畑京一郎『タイム・リープ あしたはきのう』が、四半世紀以上の時を経てメディアワークス文庫から再刊。『新装版タイム・リープ〈上〉あしたはきのう』が21位、『新装版タイム・リーク〈下〉あしたはきのう』が22位とそろってランキングに顔を出した。

 高校二年生の鹿島翔香はある日、機能の記憶を失っていることに気づく。そして日記には、自分の筆跡で身に覚えのない記述があった。それはクラスメートの若松和彦に助けを求めろというもの。和彦にも事情は分からなかったが、2人で翔香に起こっている不思議な出来事の謎に挑み始める。筒井康隆の名作ジュブナイル『時をかける少女』や、ハインラインのSF『夏への扉』といった時間が鍵となったSFが好きなら絶対にハマる作品。1997年には実写映画にもなっているが、以来それほど動きがなかったのが今回の新装版によって何か動き始めるか。期待したくなる。

 

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