『バーナード嬢曰く。』『氷菓』『花と頬』……図書館の思い出がよみがえる漫画3選

『花と頬』

 第23回文化庁メディア芸術祭マンガ部門の新人賞に選ばれた『花と頬』。ある夏の日、女子高生・鳥井頬子は男子高校生・八尋豊に自身の父がミュージシャンであることを推測される。この日を境にふたりは仲を深めていく。

 ふたりは図書委員として本の整理をするなかで交流をはじめることとなる。(間接的ではあるが)本の存在が交流するきっかけとなる点は『バーナード嬢曰く。』と重なる。それ以降も図書室でふたりは出会うこととなるものの、本作の図書室に勤める司書は私語に厳しいため、ふたりは好きな本や楽曲、遊びの約束など、筆談でお互いの言葉を交わす。

 静かな図書室でふたりが筆談によって交流する様子は、少年少女がゆっくりと仲を深めていく過程の速度を生み出していると感じる。筆談での交流は口で発するよりも言葉を生むことに時間がかかり、ときにふたりは会話の記録から過去を振り返っているためだ。

 多くの図書室において私語はタブーとされている行為であろう。会話によって言葉を発することがむずかしい空間であるからこそ、図書室では異なる交流の手段を用いて一味ちがう関係が生まれるのかもしれない。

 また頬子と八尋が筆談をしている最中を除き、静かな図書室ではさまざまな音が飛び交う。携帯電話の着信音、引いた椅子の足と地面のすれる音、グラウンドで金属バットがボールをとらえた音ーー。学校のなかでも静かな図書室は、学校特有の音を浮かび上がらせてくれる。

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