『ツワモノガタリ』『ブスなんて言わないで』『音盤紀行』……漫画ライター・ちゃんめい厳選! 5月のおすすめ新刊漫画

マグカン『おおきくて窮屈なこの世界で。』あすかいくに

 GWが明け、どことなく気だるい日常を過ごしていた時に、開放感あふれる表紙に惹かれ手にした『おおきくて窮屈なこの世界で。』。時は大正10年(1921年)、日本からたったひとりで大坂船場からイタリアへ渡り、バチカン奨学生1期生となった少年の物語を描く。

 自分らしく生きることや、居場所を作ることが今よりもはるかに難しかったであろう時代。そこで、真っ直ぐな好奇心を貫き、運命を切り拓いていく主人公・七星の姿に胸を打たれる。イタリアでは、生まれや育ちどころか、国も違う仲間たちと共同生活を送ることになるが、七星の真っ直ぐな好奇心がどんな友情を育んでいくのか見守りたい。また、読後は『おおきくて窮屈なこの世界で。』というタイトルに想いを巡らせたくなる......そんな余韻に浸りたくなるところも魅力の一つだ。

アフタヌーン『ブルーピリオド』(12)山口つばさ

 最後に選んだのは『ブルーピリオド』待望の最新刊。高校の美術室で見た一枚の絵に心を奪われた主人公・八虎。本作はそんな彼が初心者ながらも美しくも厳しい美術の世界へと身を投じていく物語で、1〜3巻は美術予備校編、4〜6巻が東京藝術大学受験編、7巻〜は、東京藝術大学入学後を描いている。

 12巻では、新入生の時期が終わり、晴れて2年生となった八虎。だが、進級と共に気持ちもフレッシュに!とポジティブ展開にならないのが『ブルーピリオド』だ。八虎は、新たな教授、仲間たちとの出会いをきっかけに、美術との関わり方、美大で学ぶ意味を自分に問い、もがき葛藤していく。予備校、受験、入学初期、どの時代も八虎は基本的にもがいていたが、今回の場合は、前進しているのか後退しているのかもわからない、ぬるりとした不安がつきまとう。

 毎巻読み終わるまでにとてつもないエネルギーを使い、読後はまず「やばい」の一言しか出てこない本作。12巻を読み終わった時も、最初に出てきた言葉はやっぱり「やばい」だった......。

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