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『ソ連兵へ差し出された娘たち』平井美帆


 「あらゆる決めごとを一方の性だけで行ってきたこの国は、自省をこめて戦後を歩んできたのだろうか――」

  終章に出てくるそんな一文が胸に突き刺さる、平井美帆の『ソ連兵へ差し出された娘たち』(集英社)は、第19回「開高健ノンフィクション賞」受賞作である。

  時は1945年夏。日本の敗戦とともに崩壊した「満州国」に取り残された黒川開拓団(岐阜県送出)の人々は、母国への引揚船が出るまで入植地に留まらねばならなかった。しかし、一部の暴徒化した現地民の襲撃が始まり、困り果てた団の幹部たちは、進駐していたソ連軍に助けを求める。それにより現地民の襲撃は収まったものの、今度は「下っ端のソ連兵ら」が女漁りや略奪を繰り返すようになる。その結果、団長らが下した決断とは……。

  そこから先の展開は、同書のタイトルが示しているとおりだ。そう、未婚の「数え年で一八歳以上」の女性が十数名選ばれ、団を守るためにソ連兵への「接待」をさせられることになるのだ。

  著者は、この過酷な“史実”をほぼ実名を出して記述しており、それだけでも充分、ノンフィクション作家としての強い決意がうかがえようというものだが、一方の、取材を受けた側の女性たちの覚悟も並大抵のものではなかっただろう。

  同書に出てくるある女性は、当時の話を「一緒に暮らす息子家族には聞かれたくない」といっている。それでもなぜ、彼女らは、あえて辛い過去を語ったのか。そのことを日本人のひとりひとりが深く考えるべき時代が、いままさに来ているような気がするのは私だけだろうか。(島田一志)

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