読書経験ゼロから“小説紹介”の寵児へ けんごが語る、動画で本を読まない人を巻き込む極意
若い世代のあいだでバズる動画のつくり方
ーー本を読まない人に向けて発信しているそうですが、伝え方のコツはありますか?
けんご:そもそも読書に興味がない人が、どうやって関心を持ってくれるか。これはすごく意識しているところです。そこで何が必要なのかなと考えると、余計な情報を省くことなんです。小説が好きな人からすれば、著者名や何々大賞受賞作といった情報は重要だと思います。でもそもそも興味がない人からすれば、まったく余計な情報なんですよ。そこを省いて、物語だけに焦点を当てて紹介する。それは一貫して意識しています。
ーーどうやったらバズらせられるでしょう?
けんご:僕が意識しているのは、冒頭1〜3秒のつかみです。TikTokは自分で動画を選んでいないので、最後まで見てくれるかわからないんですよ。僕自身、好きなクリエイターさんはいるんですけど、全部の動画を最後まで見るわけじゃない。だから、冒頭は目線をなるべく低くしてキャッチーに、あたかも小説紹介じゃないような勢いで紹介します。
ーーけんごさんのTikTokでの喋り方を見ていると、言葉に力を込めていてそれが刺さってくるように感じます。
けんご:動画でどれだけ感情を込めて喋ったとしても、対面の5分の1くらいになるという印象を持っています。だから僕はカメラの前では、5倍増しのオーバーリアクションですね。手もめちゃくちゃ使うし、表情もかなり意識してきました。
ーー若い世代の作品を多く読んでいるけんごさんから見て、最近の文芸のトレンドはありますか?
けんご:文芸だけでなく、すべてのエンタメに共通しているトレンドは「悲恋」のストーリーだと思います。『花束みたいな恋をした』や『明け方の若者たち』など、最近ヒットしている作品はそういう傾向があります。
ーーそれは、なぜだと思いますか?
けんご:近年、“エモい”ものが流行っていますよね。ただ単純に感動するだけじゃなくて、悲しさを求める。少しこじれた複雑な恋愛だったり、感情を揺さぶられることだったり。それを僕を含めた若い世代は求めているんじゃないかと思います。
ーー他には、どういう本が若い世代に求められているでしょう?
けんご:僕は圧倒的にライト文芸作品だと思っています。僕自身は最近まで読んだことがなかったんですけど、読書はじめに手に取る作品としてはぴったりです。10代の若い子たちに刺さる内容も多いですし、表紙もきれいで持っているだけで楽しい。
きれいな装丁であることは、若い世代が気になるポイントだと思います。TikTokのコメントでも「表紙がきれいな作品を教えてください」というリクエストがあるんですよ。
ーーTikTokをやめてしまうとツイートしていましたが、本当なんでしょうか?
けんご:TikTokは今のところ投稿するつもりはなくて。夏頃からいろんなことがありまして。今後はインスタグラムで、ショートムービーやテキストで発信するつもりです。
ーー今、小説を書いていて、来春刊行予定だそうですね。
けんご:9月にお声がけいただきまして。もともと出版社の方と雑談で書いてみたいと話していたくらいだったんですけど。今回、熱烈にご提案いただいたので、そこまで言ってくださるなら、書いてみたいと思いました。今は改稿段階でもうすぐ仕上がりそうです。
ーーどういう内容でしょうか?
けんご:春夏秋冬がテーマです。ジャンル分けをするならば、恋愛小説。一般文芸として打ち出されるかもしれませんが、僕はライト文芸だと思っています。僕の本紹介と同様、読書をあまりしない中高生の初めての一冊になるような作品を目指しています。