『かげきしょうじょ!!』星野薫のひたむきな姿勢が生んだ小さな奇跡 人間味あふれる魅力に迫る

※本稿は漫画『かげきしょうじょ!!』、アニメ『かげきしょうじょ!!』のストーリーに触れております。未読・未視聴の方はお気をつけください。

 女性のみで構成される紅華歌劇団の音楽学校を舞台に、未来のスターを目指してひたむきに奮闘する少女たちの青春群像を描く『かげきしょうじょ!!』。白泉社の「メロディ」にて連載中の斉木久美子による人気漫画は、テレビアニメ化もされてますます好調だ。

 物語は紅華歌劇団音楽学校に100期生として入学した、渡辺さらさや奈良田愛ら7人の少女を中心に進む。今回はその中のひとり、星野薫にスポットライトを当てて見ていきたい。

サラブレッドの称号がつきまとう星野薫

 星野薫は祖母も母も紅華歌劇団の元娘役という紅華一家の出身で、とりわけ祖母は「春の白雪姫」と謳われた元娘役トップだった。三世代続けて紅華生という薫には、サラブレッドの称号がつきまとう。だが彼女は何度も受験に失敗し、ラストチャンスとなった高校3年生でようやく合格をつかんだ苦労人だった。

 薫は入学前も入学後も祖母や母と比べられ、日々プレッシャーと戦っている。また二人は娘役として活躍したが、身長に恵まれた薫が目指しているのはあくまで男役であった。

 自他ともに厳しい努力家で、音楽学校でも人一倍高いプロ意識を持って日々の授業に取り組んでいる薫。彼女の同期生には、渡辺さらさのように規格外の行動を取る天真爛漫型の生徒もいれば、山田彩子のように素晴らしい歌唱力を持ちながら、入学後は萎縮して実力を発揮できずに苦しんでいる人もいる。薫は誰に対しても裏表のない態度で接し、ストレートに感情をぶつけていくのだった。

 たとえば、歌の授業できちんと声を出せない彩子に対する、「少人数で組む場合 自分の評価が他人の評価にも繋がるって事を自覚して ふざけないでやってほしい!」という指摘。あるいは、授業の課題として演じる「ロミオとジュリエット」の稽古場に困り、道端でもよいのではと言い出すさらさに対しては、以下のように怒りを爆発させた。

「私達は歴史と伝統を重んじる紅華歌劇団の100期生よ 道端なんてお客様の夢を壊す様な場所で 練習なんてできるわけないじゃない 私達はまだ学生だけどプロになる事はもう決まっているの もっと自覚を持ってよ!」

 気が強い薫は、たびたび周囲とぶつかってしまう。彼女の発言の根底にあるのは高いプロ意識であり、同期たちも薫の立場や発言の意味を理解している。だがグループ内で考えると、薫は損をしがちな役回りと言えるだろう。

 紅華歌劇団の魅力は団結力であるが、チームワークとはただ仲良くすることだけを意味しない。ときには薫のように、厳しい指摘をする存在も必要なのである。どこまでも生真面目な姿や、紅華に対する真摯な想いを知るにつれて、どんどん愛おしさが増してくるキャラクターだ。

 そして薫を語るうえで欠かせないエピソードして、第3巻収録の番外編「男役志望・星野薫の夏休み編」を紹介したい。アニメでは第8幕「薫の夏」として放映され、好評を博した。

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