身を潜めていた自分の”欲望“がこっそりと顔を出す!? 『欲望屋アンダーグラウンド』の魅力

欲望に素直に生きるあなたは、美しい。

 欲望とは、自分の腹の奥底から沸きあがるものだと漠然と思っていたが、少し違うのかもしれない。フランスの精神分析家ジャック・ラカンはこう言っている。「人間の欲望は他者の欲望である」と。

 あらゆる人の”欲望”が絡み合っているこの作品。欲望とは、なんだろうか。イメージでは底が見えない暗い世界、覗いてみたい……。筆者にとっては普段あまり読まない作品に手を出したと思う(最初だけ一瞬、『笑ゥせぇ〇すまん』が頭をよぎった)。GANMA!で公開されている青木ぶる氏の『欲望屋アンダーグラウンド』という作品だ。

※本作には過激・暴力的なシーンも含まれています。

2人の関係とは、犬飼の凪に対する感情とは

 「欲望が満たされた姿は何ものにも代えがたい」という犬飼の謎の理念から名をつけた、なんでも本舗『欲望屋』。そこで一緒に働くことになった凪。昭和の高度経済成長期に建てられた怪しい店が連なる楽園ビルで、2人が叶える欲望。その先には何があるのか……。

 まず目を引くのは、犬飼と凪の関係だろう。2人は同じ中学の同級生であったことや、犬飼が眼帯をしている右目を失った事件、凪と再会するまでの空白の期間に何かがあったということは序盤で明らかになってくるが、どうも2人の関係はひとことでは言いにくい。

 犬飼は自分たちのことを「変な関係」と周囲に漏らすが、凪に対する犬飼の本当の感情はどのようなものなのか。歪んだ愛、狂愛、執着、殺生与奪……一体彼女をどうしたいのだろう。反対に凪は考えていること、感情が真っすぐでわかりやすく(自分でははっきりとは気づいていないっぽいが)、いろいろと顔に出てかわいい。凪の感情の変化とともに、犬飼自身の”欲望”が何かも気になるところだ。

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