『ガラスの仮面』持って生まれった才能だけじゃない! 姫川亜弓の努力家ぶりがわかるエピソード3選

 美内すずえによる人気漫画『ガラスの仮面』(白泉社)。主人公マヤのライバルである姫川亜弓は、父が映画監督、母が女優で、本人も際立った美貌を持つ少女だ。「演劇界のサラブレッド」と呼ばれるのも当然だが、彼女は生まれながらにして恵まれているがゆえに、ほとんどの人は亜弓が影で血のにじむような努力をしていることに気づかない。

 子供の頃から亜弓は親の七光りだと言われることをいやがっていた。親と関係なく、一人の女優として実力を認めてほしい。何も持たない“平凡”なマヤが演技で周囲を圧倒し、演技力だけで評価されるのをうらやましいと思うほど、彼女の願いは強い。

 本稿では、姫川亜弓が今までどのような努力をしてきたのかがわかるエピソードを3つ紹介したい。

呼吸ひとつ乱さない猛特訓(19巻)

 亜弓とマヤが、別々の場所でひとり芝居に挑んでいた時期がある。

 亜弓は所属する劇団オンディーヌで、ひとり芝居『ジュリエット』の稽古に励んでいた。「ロミオとジュリエット」のジュリエットを、共演者ゼロで演じるのだ。

 モダンバレエ、パントマイム、演出家とそれぞれ最前線で活躍している講師が亜弓に稽古をつける。稽古場からモダンバレエの講師が出てきたとき、稽古場の周りに集まっていた劇団員は驚愕する。亜弓のタオルが汗でびしょ濡れになっていたからだ。

 稽古場からほとんど出ていないにもかかわらず、亜弓は休憩を求めない。講師たちが疲れ果てていても本人は呼吸ひとつ乱さず、彼らが青ざめるほどの熱意で稽古を続ける。

 パントマイムの特訓も見どころのひとつだ。亜弓は自分のいる位置からまったく離れずに走ったり、首や腰といった体の一部分だけを動かしたりする。しかし亜弓はどんなに苦しくても穏やかな表情を崩さない。

 マヤだけではなく、亜弓にも「恐ろしい子…!」という言葉を投げたくなるエピソードだ。

役をつかむために地下劇場で生活(24巻~25巻)

 マヤとのダブル主演『ふたりの王女』で、母親を冤罪で殺され冷たい牢獄で育った王女オリゲルドにキャスティングされた亜弓。どのようにすれば役をつかめるか思案し、マヤと生活をとりかえることを提案する。

 牢獄に似た地下劇場をマヤから借り、そこで生活を始めるのだ。

 コンクリートの床にそのまま寝て、粗末な食事を口にする。一方、姫川家の豪邸で生活を始めたマヤによって、これまでの亜弓のゴージャスな生活環境も描写される。その差は激しく、亜弓の苦労がより引き立つ。

 彼女は地下劇場での生活を続けていくうちにどんどん雰囲気が暗くなっていく。稽古が佳境を迎えたとき、彼女はメイクで頬にあざをつけ、みすぼらしい格好で街を歩く。周囲は誰も有名な美人女優・姫川亜弓だとは思わない。不気味がられ、やがて不良たちに目をつけられる。

 不良にカミソリで傷つけられそうになる亜弓だが、瓶を割り、それを不良たちに向けた。反撃されると思った不良たちはあわてて亜弓から逃げていく。

 読んでいると「事件になったらどうするんだろう」と不安になる。だが亜弓は、そんなことは気にもせず命がけの役作りをするのだ。

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