進化するアイドル漫画の現在地

　現在では『【推しの子】』を筆頭にアイドル漫画が更なる進化を遂げている。『【推しの子】』はタイトル通り、推しのアイドルの子どもに転生した1組の双子の物語を描いた作品だが、芸能界やアイドルの舞台裏をリアルに描き、時には天才子役のキャリアや恋愛リアリティショーの誹謗中傷問題などセンシティブな問題にも切り込んでいる。

　そして、おそらくアイドル漫画では初となる韓国アイドルの裏側に迫る漫画も登場している。LINEマンガにて連載中の『ガールクラッシュ』は、歌もダンスも完璧でスタイル抜群な主人公・百瀬天花が、K-POPアイドルを目指す地味目な同級生・佐藤恵梨杏との出会いをきっかけに、共にK-POPアイドルへの道をひた走る物語だ。日本の女子高生が単身韓国に渡り、練習生として厳しいレッスンを受けながらデビューを目指す......。どこか遠い国の話のようだが「TWICE」や「IZ*ONE」の登場によって、本作の設定はとても現実味を帯びている。

　『【推しの子】』や『ガールクラッシュ』は、美麗な絵と演出で物語が進む一方で、かつてのアイドル漫画にはなかったシーンの裏側をより深堀るヒューマンドラマとしての一面を見せるところが大きな特徴だ。アイドルは決して清く煌びやかなだけの存在ではない、影では誹謗中傷に心を痛め、時にはあの子よりも前に立ちたいと並々ならぬ闘志を燃やす。そしてアイドルを続ける理由は決してファンのためだけではない、自分のために頑張るアイドルだっている......。アイドルとは「偶像」や「崇拝される人や物」という意味を持つが、アイドルである彼女たちの人間らしい熱量と泥臭さを描いているところが、進化系アイドル漫画の現在地のように感じる。

　新たな局面を迎えている今だからこそ、ぜひこのアイドル漫画というジャンルに注目してみてほしい。