バイク×女子高生の物語、なぜ人気に? 『スーパーカブ』『ゆるキャン△』が描く“繋がり”
バイクによる旅の魅力は、最近のキャンプブームの鍵になっている『ゆるキャン△』にも描かれる。ソロキャンプが好きだった女子高生の志摩リンが、遭難しかけていたところを助けた各務原なでしこと一緒にキャンプに行くようになり、だんだんとキャンプ仲間も増えていく。移動から設営から料理から探索まで、キャンプの魅力を伝えてくる作品として大人気だ。
そんな展開の中、リンは原付免許を取得し、スクーターのヤマハ・ビーノを駆ってキャンプに出かけるようになる。仲間たちがミニバンで移動する中を、リンだけが山梨県から静岡県へとビーノで県境を越えてキャンプ地に向かう。旅の途中で神社仏閣に詣で、海岸線を歩くリン。バイクはどこにでも好きな時に行ける自在さをもたらした。
リンはやがて、なでしこの友人で浜松市に住む土岐綾乃と連れだって、バイクでのツーリングキャンプにも行く。行動する範囲が広がり、いっしょに出かける友人も増えたのは、バイクが遠くの地との繋がりを生み、誰かとの繋がりを生んだからだろう。そんな様子に触れるにつけ、小熊のようにバイクがあれば何かが変わるかもと思わされてしまう。
綾乃が長距離を走って足腰が立たなくなったり、リンが冬のお爺ちゃんからもらった風防をヤマハ・ビーノに取り付け寒さをしのごうとしたりする様子から、バイクは楽しいことばかりではないことも分かる。『スーパーカブ』にも、冬にバイクを駆る大変さが色々と描かれている。それでも、バイクを手に入れることで得られる喜びがあり、もたらされる繋がりがあるなら、是非に乗ってみたいし、走ってみたいものだ。
■タニグチリウイチ
愛知県生まれ、書評家・ライター。ライトノベルを中心に『SFマガジン』『ミステリマガジン』で書評を執筆、本の雑誌社『おすすめ文庫王国』でもライトノベルのベスト10を紹介。文庫解説では越谷オサム『いとみち』3部作をすべて担当。小学館の『漫画家本』シリーズに細野不二彦、一ノ関圭、小山ゆうらの作品評を執筆。2019年3月まで勤務していた新聞社ではアニメやゲームの記事を良く手がけ、退職後もアニメや映画の監督インタビュー、エンタメ系イベントのリポートなどを各所に執筆。
■書誌情報
『スーパーカブ』1〜7巻(角川スニーカー文庫)発売中
著者:トネ・コーケン
イラスト:博
出版社:KADOKAWA
『ゆるキャン△』1〜12巻(まんがタイムKR フォワードコミックス)発売中
著者:あfろ
出版社:芳文社