『葬送のフリーレン』はセオリーを無視した傑作だーー「死」から始まる物語の魅力

 漫画に関わらず創作物において、命や感情をテーマとした作品は少なくない。しかしその中でも「死」をスタート地点としたストーリー作りは非常に真新しい。そして『葬送のフリーレン』は壮大なテーマを扱っているにも関わらず、どこか軽い読み味なのが大きな魅力となっている。長寿であるが故のフリーレンの淡々とした雰囲気、それを表現するため一役買っているのが「笑い」だ。

 元々ギャグ漫画として制作されていた本作。そのテイストをしっかりと残し、本作にはどこか気の抜ける軽い笑いが随所に盛り込まれている。淡々と進行するストーリーに「感嘆符」や「大ゴマを多用しない」など、サラッと読める工夫を散りばめることで、『葬送のフリーレン』は軽快でシャレの利いた漫画に仕上がっている。

 また本作はフリーレンが喜怒哀楽を追う物語である。エルフであるフリーレンは、人間よりも圧倒的に寿命が長いからなのか、感情をあまり表に出さない。そんなフリーレンが人間を知るため、旅しながら様々な感情と向き合っていくことになる。喜怒哀楽が少ないフリーレンが主人公だからこそ、より人々の喜怒哀楽が対比的に鮮やかに浮かび上がっている。

 それを象徴するのが旅のパートナーであるフェルンとのエピソードだ。ヒンメルの死から20年の時が経ち、フリーレンはかつての仲間、僧侶ハイターの元を訪れる。ハイターは自身が引き取った戦災孤児の少女、フェルンを弟子に取って欲しいと彼女に頼む。しかしフリーレンはそれを、旅の足手まといになるからと即答で拒否。

 そしてフリーレンはハイターの一計もあり、それくらいならと彼女に魔法を指南することに。ハイターがフェルンの様子を尋ねると、フリーレンは「打ち込み過ぎだ。あまりいいことじゃない」と応える。しかし後にフリーレンは彼女の魔法への情熱の源に、「1人で生きていく術を身につけ、救ってくれたハイターに恩返しをしたい」という気持ちがあるのを知ることになった。こうしてフェルンの気持ちに触れたフリーレンは、「ヒンメルならそうした」という理由でフェルンを救ったハイターの気持ちを受け取り、彼女を旅に同行させるのだった。

 「死」から始まる物語『葬送のフリーレン』。本作は現時点での面白さもさることながら、フリーレンの旅の行く末が気になるところも魅力である。フリーレンは人間をどのように理解するのか、旅の行く末はどこに繋がっているのか。彼女の旅路から、今後も目が離せない。

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