魔女狩りは“わからない”ことへの恐怖から行われるーー漫画『魔女をまもる。』が問うもの

 キリスト教が絶大な権力をふるっていた時代、魔女狩りを行うことは、権力者にとってもひどく都合がよかったのだということも、本書を読んでいるとわかる。自分たちの教えに背く者は魔女、あるいは異端者として排斥することで、民衆に正しさを誇示する。処刑されるのをおそれて人々は教会に異を唱えることはなくなるし、魔女がすべての罪を背負って火あぶりにされる姿を見れば、理不尽な現実にも多少の胸がすく。その姿を、愚かだと笑うことはたぶん、誰にもできない。「でも人って、そういうものだよね」なんて冷笑しないためにも、『魔女をまもる。』をくりかえし読んで、自分を戒めたい。

■立花もも
1984年、愛知県生まれ。ライター。ダ・ヴィンチ編集部勤務を経て、フリーランスに。文芸・エンタメを中心に執筆。橘もも名義で小説執筆も行う。

■書籍情報
『魔女をまもる。(上)』
槇えびし  著
定価:990円(税込)
出版社:朝日新聞出版

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