『チェンソーマン』作者も絶賛! 宇宙人と幽霊が共存するバトル漫画『ダンダダン』がスゴい

 『チェンソーマン』作者の藤本タツキや、『地獄楽』作者の賀来ゆうじのもとで、メインアシスタントとして筆を執っていた龍幸伸。そんな彼が満を辞して連載に踏み切ったのが、『ダンダダン』だ。本作の魅力を語るうえでまず特筆すべきは、“爆発力とスピード感”だろう。読者に強烈なインパクトを残す爆発力、目まぐるしく展開が進むスピード感。

 そしてこの2つの魅力を生む原動力となっているのが、強烈な要素の連続だ。作中に登場する「心霊」「宇宙人」「超能力」というパワーワード。これらは1つ1つが単体でも充分に物語の核となり得るものである。特に「霊」と「宇宙人」の共演は珍しいうえに、本作では霊vs宇宙人の構図となる、ワクワクせずにはいられない場面も描かれている。

 また作中では上記した3つの超常的な設定に加え、主要人物2人の恋愛模様まで追っている。「霊に呪われた少年が超能力を扱う少女と共に宇宙人と戦い、恋をする」。このヘビーな要素をてんこ盛りにした設定が、驚異的な爆発力とスピード感を生んでいるのだ。

 設定のインパクト&ストーリーのスピード感は漫画において重要なファクターだが、これだけ強い要素が一緒くたになって展開されると、読者としては少々胃もたれしてしまう感も否めない。ではこの『ダンダダン』はなぜ胃もたれを感じさせず、最高のスタートダッシュを切れたのか。それは“作中の随所に散りばめられた軽さ”と“画力”によるところが大きいだろう。

 本作の魅力、それはすなわち“軽妙さ”だ。ターボババアと出会い、逃げながら「ただのエロいお婆ちゃんに遭遇しただけでした!」と口にする高倉。宇宙人を蹴り飛ばし自身の現在地を確認して「UFOだったんかい!!」と普通に驚く綾瀬。極め付けに綾瀬は超非常事態に陥ったにも関わらず、高倉が自身の好きな俳優と同姓同名だと知りトキめいている始末だ。

 この異様で絶望的な状況にもコミカルな反応を見せる2人の独特な雰囲気。それが重厚な作品に絶妙な軽妙さを加え、作品自体を読みやすくしている。

 そして一見詰め込み過ぎにも感じる内容にも関わらず、無理なくスッと読める仕上がりになっているのは、龍幸伸の画力の高さによるものだろう。賀来ゆうじは、彼を「僕の知りうる限り、総合的な画力が最も高い人」と評している。細かいタッチで微妙な遠近感まで再現し、迫力満点の情景を描き出す龍の画。この画力が本作の魅力をさらに底上げしているのは間違いないだろう。

 「少年ジャンプ+」に新しい風を巻き起こした『ダンダダン』。様々な工夫を凝らしたその攻撃的な作風は、漫画界に新たな可能性を提示しているようにも感じる。各所で話題となり、最高のスタートダッシュを決めた本作。物語はどのような方向に向かうのか、今後の展開に目が離せない。

■青木圭介
エンタメ系フリーライター兼編集者。漫画・アニメジャンルのコラムや書評を中心に執筆しており、主にwebメディアで活動している。

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