イケメンの“クサい台詞”が癖になる? 80年代少女漫画『ダイヤモンド・パラダイス』の時代性

 はた目から見てもとっても微笑ましいカップルに見えたふたり。だけど、ヒロキがAZに近づいたのには、大きな理由があったのでした……。

『ダイヤモンド・パラダイス』 3巻

 「ああヒロキかっこいい(ストーカーだけど)、ひろみかわいい、いいなあこのカップル」というほのぼのした読者の思いを目一杯裏切って、話は展開していきます。この裏切りっぷりがすごい。続きは全3巻なのでぜひ本編で読んでいただくとして、非常にドラマチックです。それから3巻に収録されている『セブンスアベニュー・ラブ』という作品もなかなかです。しかけがすごい。

 ニューヨークで出会ったゴーとプーキー。プーキーは日本人のゴーに「『愛してる』って日本語でなんて言うの?」と尋ねます。2人はめっちゃラブラブ愛し合ってるんですね。それに対して、バンドマンのゴーは「死・ん・で・も・い・い」と教えるんです。っカー! 「I LOVE YOUの最上級だぜ」ですって。くっさーー!「月が綺麗ですね」とか、愛してるの日本語訳には諸説あるけど、これもまたポエティックです。そしてまたこの言葉が、物語のキーになるんですよね。

 槇村さとる先生の作品は、ほんとうにドラマチックです。このふたつの作品に、高校生だった私はもう脳みそめっちゃやられました。読み返すたびに心臓掴まれてボロボロ泣いたものです。心臓掴まれたい方は、ぜひ。

■和久井香菜子(わくい・かなこ)
少女マンガ解説、ライター、編集。大学卒論で「少女漫画の女性像」を執筆し、マンガ研究のおもしろさを知る。東京マンガレビュアーズレビュアー。視覚障害者による文字起こしサービスや監修を行う合同会社ブラインドライターズ(http://blindwriters.co.jp/)代表。

■書籍情報
『ダイヤモンド・パラダイス』全3巻(マーガレットコミックス)
著者:槇村さとる
出版社:集英社

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