『呪術廻戦』はなぜ“学園漫画”である必要があった? 授業=実戦の呪霊退治を考察

 原稿を書くとき、テレビをつけていることが多い。適度な雑音があった方が、執筆に集中できるからだ。ということで、その日の夜も、テレビを付けっぱなしで原稿に取り組んでいたら、コミックの売れ行き好調というニュースが流れてきた。ああ、また『鬼滅の刃』の話かと思ったら、芥見下々の『呪術廻戦』だったよ。テレビアニメが放送中で、単行本の売れ行きが上昇しているとは聞いていたが、ニュースになるほどだったか。まあ、これだけストーリーが面白ければ、ヒットするのは当然といえるだろう。

 物語の主人公は、仙台市の高校に通う虎杖悠二だ。図抜けた身体能力を持つが、それを除けば、どこにでもいるような若者である。だが、高校で起きた“呪い”を巡る騒動で、彼は特級呪物である両面宿儺の指を飲み込んでしまった。宿儺と肉体を共有したことで、祓われる可能性が高まる。しかし、特級呪術師の五条悟により、東京都立呪術高等専門学校――通称「呪術高専」に転校。同学年の伏黒恵や釘崎野薔薇と共に、呪術を学び、呪いと戦うのだった。

 というのが当初の粗筋だが、ストーリーが進むにつれ、登場人物が増えていき、物語のスケールが拡大していく。また、世界観から呪術まで、設定が山のようにある。たとえば呪いが具現化したものを呪霊といい、呪術師たちはこれと戦っている。呪霊は力を増すごとに知恵も増し、特級呪霊と呼ばれる存在が、何事かを企んでいる。それが明らかになるのは、第10巻から始まる「渋谷事変」まで待たねばならない。

 いささか先走りすぎた。話を戻そう。本作は、呪術師と呪霊の戦いを描いたアクションものであるが、物語の枠組みに“学園漫画”を使用している。呪術高専に転校した虎杖は、五条を先生にして、個性的な同級生や先輩と共に成長していく。といっても授業=実戦といっていい。どうやら呪術界は人手不足らしく、一年生の虎杖たちも容赦なく呪霊退治に駆り出されるのだ。

 たしかに、もうひとつの呪術高専である京都校との団体戦という、いかにも高校生らしいイベントもある。だが京都校の学長の命じられた生徒たちが、虎杖の命を狙い、さらに呪霊の襲撃までが加わり、大騒動へと発展するのだ。

 それにしても本作の、学園漫画という枠組みは、どのような意味を持っているのだろうか。

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